ATS-DLD質問表と肺機能検査から見た中国東北部重工業地帯沈陽市の大気汚染が学童に及ぼす影響
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概要
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中国東北部重工業地帯沈陽市では, エネルギー生産を石炭に依存するために, 冬季には亜硫酸ガス(SO_2)や浮遊粉塵濃度(TSP)が増大し, 温度逆転層の出現と相まって付近に居住する学童の呼吸器系疾患が懸念される。本調査では, 著しい大気汚染が終了した直後の3月に同市を訪問し, 重工業地区(鉄西)と対照地区の学童に肺機能検査と質問表(ATS-DLD)を実施し, 呼吸器系疾患を推定した。重汚染地区のSO_2の年平均濃度は, 79ppb, 対照地区では24ppbであった。ATS-DLD質問表からは, 両地区に居住する学童の呼吸器系疾患の有症率, 例えば「持続性のセキ」では, 重汚染地区で8.9%で対照地区では2.8%であり, 有意差が認められた。しかし, 肺機能検査結果からは両者に有意差は認められなかった。パッシブサンプラーを学童に装着させ, SO_2個人暴露濃度を測定すると, 重汚染地区では, 検査日の環境濃度よりも50%ほど低いことがわかった。また, ATS-DLD質問表の呼吸器系疾患の質問項目の一つに「はい」と答えた重汚染地区男子学童のSO_2個人暴露平均濃度(39±21ppb)は, すべての質問に「いいえ」と答えた男子学童の暴露平均濃度(27±11ppb)よりも有意に高かった。更に, 重汚染地区と対照地区でATS-DLD質問表の呼吸器系疾患の質問項目の一つに「はい」と答えた学童のV^^・(努力性肺活量の50%呼出時の流量)は, 男子学童ではV^^・50パーセント=53.2±12.9(%), 女子学童ではV^^・50%=74.9±18.3(%)で, 全ての質問に「いいえ」と答えた男子学童のV^^・50%=57.8±14.4(%)および女子学童のV^^・50=81.7±15.5(%)よりも有意に高かった。V^^・25%にも同様の傾向が認められた。したがって, 努力性肺活量(FVC)や1秒率(FEV_1.0)では感知できない軽度の呼吸器系疾患が, 末梢の呼吸器系気管に存在する事が伺われた。
- 社団法人大気環境学会の論文
- 1999-09-10
著者
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山内 徹
三重大学医学部
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朴 豊源
三重大・医・公衆衛生
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加藤 進
三重県環境科学センター
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北畠 正義
四日市大学
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朴 豊源
三重大学医学部公衆衛生学
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北畠 正義
三重大公衆衛生
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北畠 正義
四日市大学環境情報学部
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山内 徹
三重大 医
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山内 徹
三重大学 医学部 公衆衛生学
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山内 徹
三重大学 公衆衛
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加藤 進
三重大・医・公衆衛生
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山内 徹
三重大・医・公衛衛生
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朴 豊源
三重大学医学部
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