アオカミキリモドキの生態について : 有毒甲虫の研究, II
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概要
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1.人体に水疱性皮膚炎を惹起する有毒甲虫Xanthochroa waterhousei Haroldアオカミキリモドキの生活史・習性につき観察を行つた.2.成虫・幼虫及び卵の形態を簡単に記載した.成虫の重要な種的特徴は腹端部に見出された.幼虫は胸部各節及び第1・2腹節の背面と第3・4腹節の腹面に顆粒を伴つた疣状膨隆部を具えるが, 初齢では不顕著であつた.また終齢幼虫は無眼であるが, 初齢では2対の単眼が認められた.卵は両端の円い棒状で乳白色を呈し, 長さ約1.3〜1.4mm, 幅約0.35〜0.41mmであつた.3.本邦各地に於ける成虫の出現期間を調査した.特に東京都成増と福岡県浮羽地方ではライトトラップを用いて季節的消長を調査した.大分県佐伯地方では4月下旬より6月中旬迄, 浮羽地方では5月上・中旬より7月上・中旬迄(稀には7月下旬迄), 神戸附近では5月中旬より7月中旬迄, 東京都成増では5月中旬より7月上・中旬迄出現し, 関東・中部の山岳地帯や北海道では9月に入つてからもなお活動するもののあることが知られた.一般にその発生は初夏の候に最も多いが, 北上するにつれて, また海抜高度を増すにつれて出現期の遅れる傾向が著明に認められた.4.成虫は夜間活動性で昼間は樹木の葉裏などに静止していて活動するものを殆ど見ないが, 夕刻に栗などの花の廻りを群飛する習性のあることを認めた.野外観察, 摂食実験, 消化管内容の検査などから成虫は種々の花特に花粉を食するものと考えられた.砂糖水のみを与えて飼育した成虫のうち採集後42日間生存したものがあつた.5.東京都成増で成虫の灯火飛来の時刻的消長を調査したところ, 明かに前半夜型で, 特に暗化後1〜2時間以内に集中的に採集された.6.成虫に圧迫を加えると, 前胸背の前縁と後縁のやや側方部, 翅鞘の縦隆線, 趺節の末端等から水様透明の毒液を分泌するのが認められた.7.交尾は雄が雌の背上に同方行に平行して乗る型である.また雌が他の雌の背上に平行して乗り, 一見雄が雌に交尾をいどむ際の行動によく似たふしぎな動作を行うものが飼育器内でしばしば認められた.8.飼育器内で雌が産卵管を長くつき出し狭い間隙に挿入して卵を塊状に産下するのが認められた.1卵塊中の卵の数は調査例(5例)では56〜221個であつた.卵は常温(13.9〜31.6℃)では約7〜14日で孵化した.9.幼虫は野外では杉の丸太の接地部及び土中部のやや腐朽した材部(縁材)に穿孔していたものが見出された.よつて土を盛りそれに杉の半腐朽木を埋めこんだ大形水槽を用意し, 孵化直後の第1齢幼虫を放つて飼育を試みたところ, 翌年5月に1頭の成虫が羽化出現した.従つて本種は1年1世代と考えられる.10.本邦各地で昼間野外から採集された成虫は雌雄の個体数に著しい差が認められなかつたが, 東京都成増で夜間灯火から得られた成虫の性比を調べたところ雄は雌に比べて極端に少くて総数の2%にすぎないことが知られた.これは雄の慕灯性が雌よりも弱いことによるものと考えられる.
- 日本衛生動物学会の論文
- 1958-12-10
著者
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