日本およびスリナムの室内塵から見出されたイエチリダニ(新称) Hirstia domicola (新種)
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概要
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大島(1968)がトヤチリダニMealia passericola (Fain, 1964)として再記載した本種は, 検討したところM. passericola〔=Hirstia chelidonis Hull, 1931〕とは異なることがわかったので, あらためて新種として記載した。本種はH. chelidonisと比較して両性において胴体部が小さく, また後脚が短小である。雄においてはIII脚に比しIV脚の発達がやや顕著であり, 雌においては胴体背面の後部表皮が革質化している。Fain (1967a)はHirstiaをDermatophagoidesのシノニムとしたが, われわれはGaud (1968)の意見を入れ, 下記の理由により再び本属を独立させた。すなわち, 体表面の細線紋理が緻密であり, I, II脚趺節は先端突起を欠き, IV脚はきわめて短小である。雄においてIII脚趺節に2棘があり, 肛門板縁に鋸歯状革質部があり, 生殖吸盤が生殖器の前方に位置する。Voorhorst et al. (1964)がDermatophagoides属のダニの病原性を証明してから, このグループの分類が進み, 本種を入れるとチリダニ科Pyroglyphidaeは11属26種を含むことになった。Dermatophagoides属およびD. pteronyssinusの分類学的地位につき論じた。大島(1968)はMealiaをDermatophagoidesと独立して存続させることを主張していたが, われわれは前者を後者のシノニムとすることに意見が一致した。またD. pteronyssinusとD. scheremetewskyiの同種性に関する問題は, 後者の模式産地から新しい材料が入手可能になるまで, これら両種名は保存されるべきであろう。Dermoglyphus pteronyssoides Trouessart, 1886はDermatophagoides pteronyssinusの古参シノニムである(Gaud, 1968)が, この種名は1886年以来使用されていないので, 国際動物命名規約23条bにより遺失名nomen oblitumとみなされるべきであろう。本種の和名は, 学名にちなみイエチリダニとし, トヤチリダニはH. chelidonisに付属させたい。Dermatophagoides属の種和名には, 前述の理由により当然ヒョウヒダニが使用されるべきであろう。
- 1974-12-15
著者
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大島 司郎
横浜市衛生研究所
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大島 司郎
筑波大基礎医
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Fain Alex
Institut De Medecine Tropicale
-
大島 司郎
筑波大学基礎医学系
-
BRONSWIJK van
Department of Dermatology, State University Utrecht
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Bronswijk Van
Department Of Dermatology State University Utrecht
-
van Bronswijk
Department of Dermatology, State University Utrecht
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