纎維質板の伸縮に就いて
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概要
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本文は建築用纎維質板類の含水率の變化に因る伸縮に關する實驗的研究を記述したものである。實驗に供した試材はパルプ板及びバガス板各2種で其の厚さは何れも約12mmである。試片の含水率を變化するには硫酸乾燥器を用ひ、其の長さ又は厚さの變化はダイアル・インディケーターを以て測定した。實驗の結果は次の如くである。纎維質板は木材の如く纎維飽和點を有し、其の點に於ける含水率は30%餘であつて、木材と大差がない。温度が凡そ10℃乃至30℃の實驗結果に依れば、板の長さ及び厚さは含水率の變化の履歴及び温度に影響されることなく、板の長さ又は厚さと含水率との關係は纎維飽和點より絶對乾燥状態に至るまで直線的である。從つて、含水率 w% に於ける長さを L, 絶對乾燥状態に於けるものを L_0 とする時は、種々の板の長さの伸縮程度は (L-L_0)/(L_0w/100) を以て表すことが出來、筆者は之を長さの含水膨張係數と稱す。同様に、厚さの伸縮程度は其の含水膨張係數 (T-T_0)/(T_0w/160) を以て表すことが出來る。長さの膨張係數は凡そ 0.03 乃至 0.06, 厚さのそれは凡そ 0.3 乃至 0.7 であつて、後者は前者よりも著しく大きく、其の比は板の種類によつて略々 5 乃至 14 である。尚、長さの膨張係數は板が伸された方向と其れに垂直の方向とによつて異り前の方向の膨張係數をα_1, 後の方向のものをα_2とする時は、α_2/α_1の値は板の種類によつて凡そ 0.9 乃至 1.3 である。膨張係數α_1及びα_2の値は板の種類が同じでも試片によつて著しく異るが、α_1の大なるものはα_2も亦大きく、其の比は板の種類によつて略々一定して居る。
- 社団法人日本建築学会の論文
- 1934-02-05
著者
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