水稲品種における分化穎花数と退化および現存穎花数との関係

概要

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水稲の収量向上には面積当たりの現存穎花数の確保が必要である.面積当たりの現存穎花数は穂数と1穂当たりの現存穎花数の積として求められ, 現存1穂穎花数は分化および退化穎花数の差として発現する.しかし, 多数の品種について, 1穂の現存穎花数を分化および退化穎花数の差として調査し, さらにそれらの相互関係について検討した報告例はほとんどない.本研究では, インド型, 日本型品種およびインド型ハイブリッド品種など32品種を用い, 1穂当たりの1次, 2次枝梗および穎花の分化, 退化と現存数を調査し, それらの品種間差異と相互関係について検討した.1穂の分化穎花数の品種間差異は極めて大きく(108〜470), インド型とインド型ハイブリッド品種は日本型品種より, また近年育成された新品種は旧品種より分化1穂穎花数が多かった.この差異は, 主に2次枝梗上の分化穎花数の差によるものであり, 分化2次枝梗数と1次枝梗数との間には高い有意な正の相関関係(r=0.858^<★★★>)がみられたことから, 基本的には分化1次枝梗数の差によって決定された.品種間では, 1穂当たりの分化穎花数の増加に伴って, 退化穎花数(供試品種の範囲 : 10〜246)と現存穎花数(同 : 72〜253)ともに増加したが, 退化穎花数の増加程度が大きく, その結果, 分化穎花の有効化率は低くなった.退化穎花は主に現存1次枝梗上の退化2次枝梗上に着生していた.出穂期の1茎当たり地上部乾物重/分化穎花数の比率と分化穎花の退化率との間には有意な負の相関関係(r=-0.596^<★★>)がみられた.すなわち, 分化穎花当たりの乾物生産が多ければ, 穎花の退化率が低くなり, 現存1穂穎花数が増加した.現存1穂穎花数を1茎当たりの乾物重とこの乾物重当たりの現存穎花数の2つ要因に分けてみると, 品種間差異への影響は1茎当たりの乾物重の方が大きかった.また, 現存1穂穎花数が増加すると, 全現存穎花数に占める2次枝梗穎花数の割合が高くなることが示唆された.以上の結果から, 分化1次枝梗数が増加すると, 分化1穂穎花数が増加し, また出穂期の分化穎花当たりの乾物生産が増加すると, 穎花退化率が低くなることにより, 現存1穂穎花数が増加すると考えられた.
日本熱帯農業学会の論文
2000-03-01

水稲品種における分化穎花数と退化および現存穎花数との関係

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