ヒト腎細胞癌細胞株 (KG-2) の樹立とヌードマウスを用いたヒト腎細胞癌転移モデルの作成

概要

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新しくヒト腎細胞癌培養株(KG-2)を樹立すると共に,ヒト腎細胞癌転移動物モデルを作成した.KG-2細胞は組織型が淡明細胞癌であった摘出左腎腫瘍より樹立され,そのin vitro doubling timeは約50時間であった.水腫瘍細胞をヌードマウスの皮下および腎被膜下に移植したところ両者間で造腫瘍能に差を認めなかった(共に75%).しかし,皮下に形成された腫瘍の組織像は顆粒細胞癌で血管に乏しく線維性被膜に被われ転移浸潤傾向を示さなかった.他方,腎被膜下に形成された腫瘍は淡明細胞癌で腎実質および同周囲組織へ浸潤傾向を示し,高率に肺に転移をきたした.抗ヒトcollagenase type IV抗体を用いた免疫組織学的検討では,腎被膜下腫瘍では皮下腫瘍に比べ本酵素の発現が強くまた抗マウスcollagen type IV抗体を用いた検討では腎被膜下に形成された腫瘍では,皮下に形成された腫瘍に比べより密に腫瘍内新生血管の増生が認められた.これらの事実は腫瘍細胞移植部位でのhost例の何らかの因子が移植腫瘍のcollagenase type IV産生,および腫瘍内新生血管の増生を調節している可能性が示唆された.本転移モデルはヒト腎細胞癌の転移機序の解明に有用と思われた.
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1993-06-20