血尿,蛋白尿を呈する患者の腎生検による臨床病理学的検討

概要

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1985年12月より1989年12月までの4年間に,腎生検を施行した308症例のうち,病理学的診断が可能であったのは298症例であった。これらの症例の臨床診断としては,慢性腎炎症候群が165例と最も多く全体の55.4%を占めていた.ついでネフローゼ症候群,反復性または持続性血尿の順であった。病理診断では,IgA腎症が117例と最も多く全体の39.3%を占めていた。臨床診断と病理診断の関連性について検討してみると,血尿が主体で蛋白尿はほとんど認めない反復性または持続性血尿では,81.6%の症例においていわゆる糸球体腎炎は認められず,予後良好と思われる正常糸球体か,基底膜非薄症であった。残りの18.4%の症例はIgA腎症であったが,組織学的に傷害の高度なものは1例もなかった。一方,持続する蛋白尿と血尿を主体とする慢性腎炎症候群(潜在型)では,IgA腎症をはじめとする糸球体腎炎が全体の80%を占めており組織学的に障害の高度なものも含まれていた。従って,臨床所見としての蛋白尿の重要性が確認された。年齢別にみると,IgA腎症は小児例,成人例ともに約40%にみられたが,正常糸球体例と基底膜菲薄症は小児例に多く認められた。17例の膜性腎症(小児例4例を含む)のうち,高齢者の3例に膀胱腫瘍を含む悪性腫瘍の合併が認められ,注意が必要と思われた。
社団法人日本泌尿器科学会の論文
1991-01-20

血尿,蛋白尿を呈する患者の腎生検による臨床病理学的検討

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