前立腺癌の治療成績

概要

論文の詳細を見る
1973年より1983年までの11年間に,東京大学医学部泌尿器科において,前立腺癌の診断をうけた122例について,予後調査を行った.対象患者の診断時年齢分布は,60歳より急激に増加し,70歳台にpeakをもっていた.全体の約3分の2が,stage C,Dの進行癌症例であり,全体の71.3%の症例で,初回治療法として,ホルモン療法が,選択されていた.stage別5年生存率は,他病死を追跡不能としたKaplan-Meier法による実測生存率で,stage A 100%,stage B 64.7%,stage C 54.4%,stage D 31.3%であった.初回治療として,ホルモン療法が選択された症例では,再燃群,無効群など,低抗性を示す症例が,全体の56.3%も存在し,これらの症例では,非再燃群に比べて,明らかに,予後不良であった.従って,ホルモン療法は,前立腺癌の有効治療法であるが,その適応は限られたものとなると考えられた.今後は,ホルモン低抗性癌に対する新しい治療法の開発とともに,治療法の選択のため,個々の症例において,ホルモン感受性を定量的に予知することが必要と考えられた.
社団法人日本泌尿器科学会の論文