膀胱腫瘍の疫学的研究 : 長野県における膀胱腫瘍罹患率の地理的分布に関しての調査

概要

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1974年より1978年の5年間に,長野県下の泌尿器科診療を行なっている12病院を受診した膀胱腫瘍の新患者432人(男330人,女102人)の年齢,性,居住地の調査を行なった.長野県の地理的条件および膀胱腫瘍の特殊性から,大多数の患者を網罹しているものと考えられるので, 1975年の国勢調査による人口動態に基ずいて,年齢,性,地方別の罹患率(10万人当り)を求め以下の結果を得た.1)長野県における膀胱腫瘍の罹患率は,男性6.8,女性2.0,男女合計4.3である.30歳以上の人口を対象とすれば,男性12.3,女性3.4,男女合計7.5である.2)年齢別の罹患率は,男女とも年齢とともに指数函数的に増加する.3)罹患率の男女比は,全年齢で3.5,30歳以上で3.6である.4)全市部と全郡部との間,大都市(長野市,松本市)とその周辺市町村との間に罹患率の有意差はない.5)長野県を10地方に別け罹患率を比較すると,女性では地域差はないが,男性では大北地方(10.5)が全県平均(6.8),北信(3.8),上伊那(5.4),飯伊地方(5.2)より有意に高く,北信地方は全県平均より有意に低い.また大北,北信両地方は,男女比が各々6.0,1.5となっている.これらの事実より今後この両地方を中心にさらに疫学的調査をすすめ,その要因の解明に努める必要がある.