斜長石双晶法式の光学的新決定法
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概要
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§1.(010)面を接合面とする斜長石双晶 : 斜長石双晶には,(010)面を接合面とするもの(albite双晶,Carlsbad双晶,albite-Carlsbad双晶,Ala B双晶,albite-Ala B双刷,(001)面を接合面とするもの(Manebach双晶I,acline双晶,Manebach-Ala双晶,Ala A双晶,Manebach-acline双晶),Rhombic sectionを接合面とするもの(pericline双晶),(021)面及び(021)面を接合面とするもの(Baveno(右)双晶及びBaveno(左)双晶)の4種があるが,自然界では(010)面を接合面とする双晶の出現頻度がもっとも大きく,70%乃至90%に達する。§2.光学的基礎 : 具体的研究方法は,斜長石の(010)面を,U-stageの視野の縦線に平行におき,南北軸廻転によって(010)面を立て,もっとも細い線になるようにし,次に東西側廻転を小刻みに行ないながら,斜長石の消光角を詳しく測定する。消光角の値は結晶光学的に求めうる。Fig.1は,(010)面に垂直な薄片に,c軸方向から光が入射した場合の消光角(δ_1)を示したもので,光軸A_1,B_1の位置をλ_A,ψ_A;λ_B,ψ_Bとすると,tan T_1=(tanψ_A)/(sinλ_A), tan U_1=(tanψ_B)/(sinλ_B)であり,消光角(δ_1)はδ_1=(T_1+U_1)/2=(1/2)[tan^<-1>((tanψ_A)/(sinλ_A))+tan^<-1>((tanψ_B)/(sinλ_B))]であらわされる。Fig.2は,(010)面に垂直な軸の周りに,上記の斜長石をθだけ廻転させた場合の,消光角値の変化を示したものである。この場合も,tan T_2=((tanψ_A)/(sinλ_A+θ)), tan U_2=((tanψ_B)/(sinλ_B+θ));したがって消光角(δ_2)はδ_2=(T_"+U_2)/2=(1/2)[tan^<-1>{(tanψ_A)/sin(λ_A+θ)}+tan^<-1>{(tanψ_B)/sin(λ_B+θ)}]であらわされる。光軸A,Bの位置は,Burriら(1967)の集録した低温型及び高温型斜長石のデーターを用い,東西軸のまわりの廻転角に相当するθの値を0°から180°までこまかく変化させて消光角の値を求めた。§3.(010)面に垂直な面上の消光角 : 東西軸のまわりの廻転角θを変化させた場合の,消光角変化曲線の一例をFig. 8bやFig. 10に示す。λ_g=+57.3°で消光角は最大となり(δ_g=27.3°),λ_l=-10.1°で消光角は最小となる(δ_l=-O.0°)。消光角測定の場合,(010)面に平行な線から時計方向に測った角を正,反時計方向に測った角を負とする。λ=0.0はc軸の方向であり,λ_gは最大消光角(δ_g)を呈する方位であり,λ_lは最小消光角(δ_l)を呈する方位である。今後の論議にとくに必要なものは,δ_g,λ_g;δ_l,λ_lの4つである。Fig.3は,低温型斜長石について,δ_g曲線(ABCDE)とδ_l曲線(A'B'C'D'E')とを示し,Fig.4は,高温型斜長石について,δ_g曲線(ABCDF)とδ_l曲線(A'B'C'D'F')とを示した。Fig. 3・Fig. 4によって斜長石の組成を決定できる。面図はSuwaら(1968c)を少し改訂してある。§4.c軸方位の決定 : たとえば,低温型斜長石に関して,Fig.3で組成を決定し,λ_g,λ_l,a軸((001)面と(010)面との交線)の3方位のうち,2つを決めれば,Fig.6を用いて,6軸の方位を求めうる。なお,δ_gによって斜長石の組成を決め,消光角の変化を測定すれば,その組成に関する消光角変化曲線を利用してc軸の方位を求めうる。Fig.7は高温型斜長石の6軸決定図表である。Fig.6・Fig.7において,実線曲線はλ_gを,破線曲線はλ_lの方位をあらわしている。面図はSuwaら(1968d)を若干改訂してある。従来,Carlsbad双晶やalbite-Carlsbad双晶の双晶軸を求めて,c軸の方位を決定していたが,両双晶の出現頻度は低いため,従来の方法の適用範囲は小さかった。上述の新方法は,(010)面が接合面または劈開面としてあらわれている結晶であれば使用できるので,適用範囲はきわめて大きい。§5.双晶法式の決定 : Fig.9に,(010)面を接合面とする双晶法式の方位関係を示す。紙面を(010)面とすれば,albite双晶の双晶軸は紙面に垂直であり,Carlsbad双晶の双晶軸はc軸に一致し,albite-Carlsbad双晶の双晶軸は紙面内でc軸に垂直である。Ala B双晶の双晶軸はa軸に一致し,albite-Ala B双晶の双晶軸は紙面内で"軸に垂直である。低温型斜長石An 50-0の双晶を具体的に考えてみよう。双晶片の任意の一方側を"Original"と名づけ,それと双晶関係にある他方側との関係を,Fig. 9にもとづいて考えよう。albite双晶:original例と双晶側とは,対称消光を示すので,Fig. 10に示すように,δ=O°の横直線を2回対称軸としてoriginal消光角変化曲線(実線)を廻転させれば,albite双晶消光角変化曲線(破線)をうる。Carlsbad双晶:λ=0°の縦直線(すなわちc軸)を2回対称軸としてoriginal曲線を廻転させれば,Fig.11に示すようにCarlsbad双晶山線をうる。albite-Carlsbad双晶:Fig.12に示すように,λ:±90°の縦直線(すなわち⊥c軸)を2回対称軸としてoriginal曲線を廻転させればよい。Ala B双晶:Fig.13に示すように,λ=180°-β=+63.8°の縦直線(すなわちa軸)を2回対称軸としてoriginal曲線を廻転させればよい。albite-Ala B双晶: Fig. 14に示すように
- 日本地質学会の論文
- 1974-09-30
著者
-
水谷 伸治郎
日本福祉大学情報社会科学部
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水谷 伸治郎
Department Of Earth Sciences Nagoya University
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諏訪 兼位
Department of Earth Sciences, Faculty of Science, Nagoya University
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都築 芳郎
Department of Earth Sciences, Faculty of Science, Nagoya University
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諏訪 兼位
日本福祉大学
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