α-リン酸3カルシウム-クエン酸-タンニン酸硬化体の物理化学的性質に及ぼすタンニン酸の影響

概要

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α-リン酸カルシウム[α-Ca_3(PO_4)_2;以下α-TCP]とクエン酸水溶液を練和すると, これらは硬化する.本研究の目的は, α-TCPを使った新しいリン酸カルシウム材料の基礎的研究として, α-TCPセメント硬化体の物理的, 化学的性質へのタンニン酸添加による影響を調べることである.α-TCPをクエン酸とタンニン酸とが, 種々の濃度で含む混合酸〔酸の総濃度は45%(w/w)〕とともに, 粉/液比=2.2/1.0(g/g)で練和した.硬化体の破砕抗力, 凝固時間, および崩壊率は, ADAS No.61の方法に準じて測定を行った.硬化体を1, 7日間蒸留水に浸漬した後, その表面構造をX線回折, 走査型電子顕微鏡, 赤外吸収スペクトルにより調べた.浸漬1日後の崩壊物についてもCa, Pの濃度定量によって調べた.タンニン酸の全体の有機酸に対する割合(T/A)が30%(w/w)を越えると凝固時間, 崩壊率ともに顕著に増加した.T/A=30%(w/w)の時, 最小値[6.25分, 1.70%(w/w)]を示した.破砕抗力はT/A=10%の時, 最高値(139MPa)を示した.T/A=10%を越えるとT/Aの増加に伴って顕著に減少したが, T/A=30%(w/w)の時でもなお高い値(103Mpa)を示した.又, 蒸留水浸漬前後の硬化体の表面における生成物についても議論した.
日本歯科理工学会の論文
1989-03-25