マウス奇形腫由来胚様小体(EBs)の培養条件下に於ける発生生長 : その牛胎児血清高分子画分存在下,低分子画分要求性
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概要
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Ascites teratocarcinoma OTT-6050 is a totipotent tumor line repeating malignantly indefinite proliferation of the simple type of embryoid bodies(EBs)in 129Sv mice.In culture with fetal calf serum(FCS)in Eagle's minimal essential medium(MEM),these EBs show developmental growth of enlargement,in which some differentiative events result.After 2 days of culture,although these EBs keep still the same type,they show a clearly different mode of DNA synthesis.This developmental growth is also seen in MEM supplemented with the low molecular weight Fraction L(mol.wt.less than 10,000)of FCS,in the presence of the high molecular weight Fraction H(mol.wt.more than 10,000).Developmental growth of EBs is not seen in MEM supplemented with Fraction H alone.However,Fraction H is necessary for the survival of EBs in vitro.One action mechanism of Fraction L,in the 2 days cultured EBs,is an acceleration of DNA synthesis,by the enhanced uptake of 3H-thymidine,resulting from an increase in Vmax in the uptake of 3H-thymidine,without any change in the Km.In contrast,some extent of the developmental growth of EBs was seen in only NCTC-135 medium supplemented with Fraction H alone.マウス奇形腫由来胚様小体(EBs,OTT-6050株)は129/Svマウス腹腔内で,単純型EBs(内部胚性癌腫細胞を一層の外層細胞が取り囲む構造を示し,長径0.1-0.3mm程度の楕円盤状体)の無限癌増殖を繰り返している分化全能性の悪性腫瘍細胞系である。しかし,牛胎児血清(FCS)を10%濃度に添加したイーグルMEM培養液中に移して培養すると,これらEBsは無限癌増殖を止め,そのサイズを増大させ,約一週間程度の培養後には各EBsから発生成長した直径1mm程度の塊状細胞集合体(嚢状型EBs)中には,角化上皮・血島等の分化が観察される。この培養二日目のEBsは末だその単純型の形態を保持はしているが,それらEBsの行うDNA合成のパターンは腹腔内で無限癌増殖をしているEBsとは著しく異なっていることを今回明かにした。培養EBsの示すこの発生成長は,培養液に10%濃度にFCSを添加する代わりに,そのFCS中の濃度に各々相当する10%濃度のFCS高分子画分(画分H;アミコン限外ロ過膜PM10透過不可,分子量10,000以上のFCS抽出高分子画分)存在下にFCS低分子画分(画分L;PM10膜透過可能,分子量10,000以下の低分子画分)を20%濃度に加えた時にのみ可能であった。高分子画分HはEBsの培養条件下での生存にのみ必要であり,画分Hのみを添加して培養した場合,EBsは生存はできるが,成長はできなかった。培養液のみ,または培養液に画分Lのみを添加した場合には,EBsは24時間以内に萎縮し,生存できなかった。培養二日目のEBsを用いて画分Lの細胞増殖促進作用の機構をトリチウムで標識したチミジン(3H-TdR)を使って調べたところ,画分Lは画分H存在下にEBs細胞の3H-TdR取り込み反応のKm値を変えることなく,Vmax値のみを増大させて3H-TdRの細胞内への取り込みを促進すること,これら培養EBs細胞のDNA合成の程度は,この3H-TdRの取り込み率に比例することも確かめた。また,各種の培養液にFCS画分Hのみを加えてEBsの示す発生成長を調べたところ,画分Lの要求性はアミノ酸・ビタミン等の含有栄養組成上の欠損に由来するものではないと考えられた。しかし,培養液NCTC-135を用いた場合には,画分Hのみの添加条件下に,他の培養液に比べて有意のEBsの発生成長がなされるのが観察された。培養液NCTC-135は他の培養液と異なって,その成分組成に脂質溶解性のエチルアルコール(40mg/l)と,同じく脂質溶解性の表面活性剤のツイーン80(12.5mg/l)を含んでいることで特異な培養液であり,これら薬剤の作用とFCS画分L中に含まれる生体低分子物質のEBsの発生成長に於ける細胞表面への作用機構の類似性が注目された。
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