ピランデルロと宗教
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ピランデルロのUno, nessuno e centomilaは、ヴィタンジェロ・モスカルダという人物による自伝的な手記の形式で書かれた長篇である。作者の息子であるステファノ・ランディが言うように、もしこの作が彼の家庭生活と関連を持つものであるならば、これは彼の最も内心の思想を理解するための一つの鍵として役立つであろう。彼は一九一〇年にこの作に着手し、一九五二年にこれを発表したのであるから、その間に於いて彼がどれ程多くの努力をこれに注いだか容易に想像することができるであろう。これは相対論から神話にいたる彼の思想的発展の記録でもある。この作の第七の書、第五の章は「内なる神と外なる神」という題名をかかげている。ヴィタンジェロ・モスカルダが妻の愛犬であるビビーを散歩に連れて出ると、ビビーはぜひとも教会堂の中にはいろうとする。然し犬は教会堂にはいることが許されないので、ヴィタンジェロはビビーを叱りつける。ビビーは、自分のように美しい牝犬が教会堂にはいれない理由はないと信じているように見える。もしも教会堂の中に誰もいなかったならば、ビビーははいれるだろうか。「誰もいない?ビビーよ、どうして誰もいないことがあろうか?そこには人間の感情のうちの最も尊敬すべきものがあるのだ。お前はこれらのことを理解することができない。それはお前が宿命によって犬であり、人間ではないからだ。人間たちは彼等の感情に対しても家をたてる必要を持っている。わかるかね?彼等にとっては感情を自分の内に、心の中に持つだけでは足りない。彼等は自分のそとでも、それを見、それに触れることを望み、それのために家をたてる。」ヴィタンジェロは更に彼自身の神について考える。
- イタリア学会の論文
- 1964-01-20
著者
関連論文
- ピランデルロとマルタ・アッバ
- ピランデルロの作中人物ヴィタンジェロについて
- ピランデルロと作中人物
- エウジェーニオ・ザノーニ・ヴォルピチェルリ : 東洋に於けるダンテの紹介者
- ピランデルロと宗教
- ピランデルロの神話「山の巨人たち」に就いて
- ピランデルロの町アグリジェントを訪ねて
- ピランデルロとドイツ