ガスクロマトグラフィー/質量分析法による毛髪試料中のヘロイン代謝物の定量とヘロイン使用証明への応用 (<特集> バイオサイエンスと分析化学)
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概要
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ヘロイン投与のラットを用いて, ヘロイン代謝物(6-アセチルモルヒネとモルヒネ)の血しょう(plasma)から毛髪への取り込みについて, GC/MS-選択イオンモニタリング(SIM)法により究明し, 更にヘロインの使用証明のための生体試料としての毛髪の有用性を血しょう及び尿試料と比較した.有色毛を有するラット(DA系, 5週齢)にヘロイン2.5及び5.0mg/kgを1日1回10日間腹くう内投与し, 血しょう, 尿及び毛髪中の6-アセチルモルヒネとモルヒネをトリメチルシリル(TMS)誘導体化してGC/MSにより定量した.得られた血しょう中濃度-時間曲線下面積(AUC_∞)と28日間で新たに生えた背部の毛髪中薬物濃度を比較して, 血しょうから毛髪への二つの代謝物の取込率を比較した.その結果, 6-アセチルモルヒネの毛髪への取込率は.モルヒネのそれより7倍以上であった.これは6-アセチルモルヒネがモルヒネより毛髪に取り込まれやすく, 蓄積しやすいことを示している.次いで, ヘロイン使用証明用生体試料としての毛髪の有用性を血液や尿試料と比較した.6-アセチルモルヒネの検出可能な時間に関しては, 血液や尿試料ではそれぞれ3又は48時間以下であるのに反し, 毛髪試料では28日後に採取した試料から明確に確認できた.更に, ヘロイン乱用者の毛髪からは1.4年前に相当する毛髪の部位からも6-アセチルモルヒネを確認した.このことは6-アセチルモルヒネが尿や血液中で不安定であるのに比べ, 毛髪中ではかなり安定であることを示している.毛髪試料が他の生体試料に比べ, 6-アセチルモルヒネの存在量の多さと1年以上の過去にさかのぼって検出可能であるという点に関し, ヘロインの使用証明を行う上で, 非常に有用な試料であることが明らかになった.最後に, 本法を用いて, ヘロイン常用者の過去の薬物歴と毛髪中の薬物分布を比較した.
- 社団法人日本分析化学会の論文
- 1995-10-05
著者
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