鉄-57のメスバウアー分光法による古代カワラの状態分析
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概要
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宮城県多賀城跡出土のカワラ3点とこれらを製造していたと推定されている同県加美郡色麻村の日の出山瓦窯跡群(8世紀)から出土したカワラ20点,並びに茨城県水戸市の台渡廃寺,田谷廃寺,勝田市の津田遺跡,水戸市の原の寺瓦窯跡(9世紀)出土のカワラなど,合計27点の古代カワラのメスバウアースペクトルを室温で測定し,鉄の状態分析を行った.カワラのスペクトルは常磁性のFe^<2+>,Fe^<3+>及び鉄の磁性酸化物の存在を示す.スペクトルの吸収面積比から求められた鉄原子の各化学状態への分布相対比とカワラの色調の間には関連が認められ,灰色のカワラでFe^<2+>が多く,赤かっ色のカワラではヘマタイトやFe^<3+>が多い.幾つかの暗灰色や暗赤かっ色のカワラではマグネタイトの存在が認められた.大部分の古代カワラについて,Fe^<2+>の存在比は原料粘土より大きい.これはこれらの古代カワラが還元的なふんい気で焼成されたことを示している.又,常磁性のFe^<2+>には環境の異なる少なくとも2種類のサイトの存在が認められた.いずれのサイトについても,日の出山と多賀城のカワラの多くは水戸付近出土のカワラに比べて四極子分裂が小さいことが明らかになった.
- 社団法人日本分析化学会の論文
- 1977-08-05
著者
-
富永 健
東京大学 (理学部)
-
竹田 満洲雄
東邦大学理学部
-
竹田 満洲雄
東京大学理学部化学教室
-
富永 健
東京大学理学部
-
馬淵 久夫
東京国立文化財研究所
-
江本 義理
東京国立文化財研究所
-
江本 義理
東京国立文化財研究所保存科学部
-
馬淵 久夫
東京国立文化財研
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