11.ビタミンB1欠乏性末梢神経障害における患者背景並びに治療効果に関する臨床的検討 : 第397回ビタミンB研究委員会
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概要
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目的 ビタミンB1(B1)の欠乏状態において, 多発神経炎などの神経症状を呈するが, その成因ならびに末梢神経障害発症機序の詳細については不明なところも多い. そこで, B1低値の末梢神経障害患者で臨床的背景ならびに治療効果に関する検討を行った. 対象, 方法 この4年間に当科に入院した末梢神経障害患者のうちB1値が20ng/ml未満の患者につき検討した. 対象症例は, 39歳から67歳(平均57.9歳)の計8名(男5名, 女3名)で, 全例に電気生理学的解析を行い, アルコール多飲, 胃切除術の既往の有無並びに糖尿病(DM)の合併につき調査した. またB1投与による治療効果についても検討した. 結果 アルコール多飲による栄養不良な症例は4例, 胃切除歴のある症例が4例, DM合併例は3例であった. 胃切除症例ではDM合併者はいなかった. 電気生理学的には全例で感覚神経活動電位(SNAP)の低下が認められたが, 4例では脱髄が優位と考えられた. 糖尿病合併者はすべて脱髄所見優位であった. B1投与が短期間で効果を示した症例は4例のみで, 糖尿病合併例では効果はほとんど認められなかった. 考察 B1欠乏症の原因としてはアルコール多飲や栄養不良の他に, 胃切除の既往が重要と考えられた. また, アルコール多飲例やDM患者ではB1による治療は著効せず, 複合的要因が想定された. DM患者では電気生理学的にCIDPに類似しており, B1低下がその発症に何らかの影響を及ぼしている可能性も想定された. 〔論議〕安田客員 1)B1の投与期間, 投与量はどのくらいか. 2)B1誘導体を経口投与されたか. 栗山委員 1)投与は入院中, 注射による血中投下. 50〜100mg/dayの投与量. 2)入院中約1〜2ヵ月くらいの効果判定. 井上準委員 1)アルコールが胃や肝のB1トランスポーターを阻害したりダウンレキュレートしうるか. 2)DMもアルコールもアルデヒドシンドロームが共通の病態因子になる得るが, これが両者でB1欠乏と関係する可能性はないか. 栗山委員 可能性はあると思うが, データはない. 報告もない. 2)可能性ある. 検討したい. 大島委員 胃の切除がB1欠乏に影響があるとのことですが, 他の臓器による補しょうはないのですか. 栗山委員 切除後, 胃以下の腸が代償して充分吸収しうるが, 胃切除後の患者さんが明らかに認められることは意外とB1吸収における胃の役割は大きいものと思われる.
- 日本ビタミン学会の論文
- 2004-09-25
著者
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栗山 勝
福井大学医学部第二内科(神経内科)
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栗山 勝
福井大学医学部 第二内科
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栗山 勝
福井大医第二内科
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中川 広人
福井大医第二内科
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栗山 勝
福井医科大学第二内科
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中川 広人
福井大学医学部第二内科
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