Trichoderma viride の "Less-random" 型 Avicelase の精製と性質
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概要
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私共は, Trichoderma virideから製造した市販品Cellulase-Onozuka中に, Reese ら (1950) が最初提唱し, 現在では多少別の意味に使われている2種のセルラーゼ成分C_1 と C_X が果して存在しているのかどうか, 若し存在しているならそれを単離して本当の酵素学的性質を確めたいと思い, Amberlite CG-50 と DEAE-Sephadex A-50 のカラムクロマトグラフにより粗酵素液を分別し, 2種の性質の著しく異なったセルラーゼ画分を超遠心分離法では単一ピークを示すまでに純化した. そのうち1つは, CMCに対し強い糖化力と粘度化力を示すがAvicelや綿セルロースには弱い糖化力しか示さず, 膨潤セルロースや再生セルロース, セロオリゴ糖にはよく作用し, いずれからも最終生成物としてセロビオース(G2)とグルコース(G1)をほぼ等量に生成するセルラーゼで(これをCMCaseと呼んだ), 他は, Avicel糖化力が格別に強く, 次で膨潤および再生セルロース, 可成り弱くなるが綿セルロースにも糖化力を示し, 勿論セロオリゴ糖にも作用し, G2≫G1の最終生成物を生じるセルラーゼで (これをAvicelaseと呼んだ), CMCには弱い糖化力と粘度低下力しか示さない成分であった. そのうち CMCaseは, 同じくCellulase Onozukaから分画精製した性質既知のさらに高純度なセルラーゼFIIpCと全く同一であったので, それと, 等電焦点泳動でさらに純化したavicelase (FIIIefA) とその性質を比較した. 両者は綿セルロースの糖化や重量減に対し著しい相助効果を示し, またCMCaseはavicelaseよりも綿セルロースの<DP>^^^-減少に対して遥かに容易で且つ "more"random 型を示した. またこのavicelaseのセロヘキサオース (G6) に対する水解産物を経時的に調べると, 途中セロトリオース (G3) もかなり多く検出された. そこで, このavicelaseを DEAE-Sephadex A-50 と Bio-gel P-150 のカラムクロマトグラフにかけ, 僅かに混在していたCMCase様セルラーゼを除いた. それ (FIIIc) は, 超遠心分析は勿論のことdisc-電気泳動でも単一成分を示し, 免疫学的分析では, 僅かにCMCase (FIIpC) と共通の決定原子団の存在が推定されるだけで, 他は全く別であった. しかし, アミノ酸組成はFIIpCと二・三の僅少の相違を除く外大部分はよく似ていた. 分子量は約5.3万で, 約14%の糖質(構成糖, マンノース≒グルコース≫キシロース≒ガラクトース≫グルコサミン) を含み, FIIpCよりAvicel糖化力は遥かに強いがCMC 糖化力と粘度低下力は遥かに低かった. しかしいずれの基質からもG2≫G1 (G1=3〜6%) を最終生成物として生じ, G6からは中間生成物としてG3も生じた. これらの結果から, このavicelase (FIIIC) は, Woodら (1972) がTrichoderma koningiiから分画精製したavicelase (彼らはこれをC_1とも呼んだ) や Pettersson ら (1972) が Cellulase Onozuka から分画した avicelase (彼らもこれをC_1とも呼んだ) と, その純度は全く同じ程度と判断されたが, 彼らは, それをAvicelの末端から G_2単位に逐次加水分解するβ-1,4-glucan cellobiosylhydrolase (exowise 型) と考えたのに反し, 私共はそれを極端に "less random" 機作を示す1種のendo型セルラーゼと考えた. その理由は基質水解の中間物としてG3も検出されたこと, G1がいずれの基質からも, その量こそ少ないが検出されたこと, および長時間作用させればCMC糖化力のほかに粘度低下力も測定出来たなどのことである.しかし, いずれにしても, avicelase (FIIIC) と CMCase (FIIpC) とは, 綿セルロース分解に対して相助効果を示すことからは, Reese流の命名によるC_1 と C_x に相当するが, それらの基質特性はいずれも [C_1+C_x] の性質を持っており, Avicelを C_1,CMCaseをC_x と呼ぶことは, 勿論定義の問題ではあるが, Reese元来の命名の旨意からは遥かにかけ離れたものであり, 従って現在までのところ少なくとも T. viride には, 本来命名通りの C_1 や C_x の存在を見出すことは出来なかった.
- 公益社団法人日本生物工学会の論文
- 1974-04-25
著者
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