竹材の物理的性質に関する研究(第VII報) : 断面別水分蒸発について
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概要
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竹材の各断面別水分蒸発の時間的経過, 蒸発量及び蒸発速度等を知る目的で仕事をした。材料は, モウソウチク及びマダケであり比較材として, アカマツ, スギ, ブナ及びセンを用いた。試片は, 10×10×40mmとし約6カ月間水中浸漬した材料を用い, 乾燥条件は, 温度42℃±1℃, 関係湿度約0.0%である。なお希望蒸発面以外の被膜としてパラフィン膜を固着せしめた。1) 試験開始時の含水率は, 竹材100〜130%, 木材150〜200%であり略々極限含水率と思われる。2) 試料の乾燥に伴う収縮現象によりパラフィン被膜との間に間隙を生ずるのが、早いもので7時間後位に起るので安全をみて5時間経過迄について検討する。単位面積当りの蒸発量の時間的増加は、直線或は抛物線として表現された。竹材では, この直線的変化を辿るのは木口面蒸発の場合に略々限られ, 木材では, 木口面及び板目面蒸発に長期に亘る直線型がみられ, 半径面蒸発では初期に限られた(但しスギを除く)。即ち竹材では木口面を除いて木材に比して蒸発量の低減する度合が強い。3) 竹材の切線断面の中, 外側の外皮に近い面からの水分蒸発量は内側の髄層に近い面よりのそれに比し尠い。これは維管束の分布密度と直接関係があり維管束中の繊維状厚膜細胞が水平方向の水分移動に対し一種の抵抗となると考えた。4) 単位面積当りの水分蒸発量と経過時間との間の実験式を各断面別に求めた。5) 一定時間経過後の単位面積当りの水分蒸発量の断面別大小順位は, 竹材では, 木口面, 内側切線面, 半径面, 髄層面, 外側切線面, 外皮面となり, 木材では, 四樹種ともに, 木口面, 板目面, 柾目面の順である。しかして, モウソウチクでは, 木口面は外皮面の約3倍, マダケでは約6.5倍に及んだ。6) 全断面合計蒸発量は, モウソウ尠く, マダケとスギは類似し, マツ, ブナ, センが大きいが, この3者の値は類似する。以上は竹材の外皮及び髄を削除した中心柱のみの場合であるが, 此等を含む竹稈の場合は木材よりかなり低くなる。7) 経過時間毎の蒸発速度を求めて総括すると, 竹材では木口面最も速く, 内側切線面が次に位し, 外皮及び外側切線面がおそく, 髄及び半径面が中位にある。木材では, 木口, 板目, 柾目面の順となる。
- 日本森林学会の論文
- 1956-02-25
著者
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