林木の耐寒性に関する研究(III) : スギの当年葉の耐凍性と乾燥抵抗性の季節変化
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概要
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前報までの結果から, スギの針葉の耐凍性に, それらの乾燥抵抗性が重要な役割を果たしているのではないかと推測された。このことを確かめるために, 季節を違えてスギの葉を低温下(0℃)に置き, シリカゲルを用いて脱水した後, 10℃に置いて復水させ, その後の回復状況から, それらの乾燥抵抗性を調べた。このようにして得られた乾燥抵抗性と, これと並行して調べた耐凍性の季節的変動とから, 両者の関係を検討した。スギの当年葉の乾燥致死限界(L.R.)は, 9月末には130〜95%(対乾重)程度の含水率であった(図-2)。それは冬の訪れと共に低下し, 耐凍性の最も強まる1月から2月にかけて, 70〜50%に達した(図-3〜7)。このようなスギの針葉の乾燥抵抗性の季節的変動は, 先に述べた耐凍性と乾燥抵抗性との関係をある程度裏づけるものであろう。しかし, 本実験においては, スギの針葉のこれら二つの生理的特性の間に, 直接的な関係が存在するという証拠は得られなかった。一方, 耐凍性の増大に伴って, 針葉の含水率の低下が観察された。この傾向は, 通常の含水率だけではなく, 飽和含水率においてもみられた(表-1)。しかし, これらの含水率と耐凍度とを比較すると, 両者の変動は必ずしも一致しないようだ。このことは, 含水率の低下が針葉の耐凍性の増大に対して, いわゆるwater stressとして間接的な影響を与えるとしても, 針葉の耐凍度の大きさと, その含水率との間に, 直接的な関係がないことを示していると考えられる。
- 1972-04-25
著者
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