花崗岩質土壌のスギの造林法(III) : 土壤の物理, 化学, 鉱物学的性質と広葉樹の無機組成
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概要
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愛知演習林瀬戸地区の土壤には, その生成条件の相違から二つのタイプがみとめられ, 今回はその一方について土壤の諸性質が検討された。この土壤は, 数層の層理からなり, 全層を通して微粒分に乏しいが, 特にI層がII層より粘土分の少ないのが著しい特徴としてみとめられた。化学性はそれに伴なう植生によって著しい相違がみられた。すなわち, アカマツ主体の土壤は, 塩基がきわめて不飽和であり, 炭素率が異常に高く, 窒素の溶脱現象がみられた。これに対して, 主として落葉広葉樹を伴なう土壤は, 塩基飽和度も高く, 炭素率もふつうであった。このような, 形態的あるいは内的性状の誘因は, 地質学的所産というよりは, むしろ数百年前からの陶人による林地の乱伐が直接のものと考えられた。1次鉱物または粘土鉱物には, 石英, 長石類, 雲母の風化物, ギブサイト, カオリン族, 2 : 1型鉱物の存在がみとめられた。そして特に重鉱物類に乏しい1次の鉱物組成が, この土壤の移動性と関連して考えられそうである。これらの土壤の特徴, 広葉樹の土壤におよぼす影響の大きいことから, 花崗岩に由来する土壤のあつかい方としては, 林地の安定が先決であると結論づけられた。安定化の具体的方法の一つとして, 土壤流亡をきたさない更新法, すなわち小面積皆伐を基本に, ついで地力の増進をはかるため, 塩基類を豊富にもつ広葉樹よりの有機物の蓄積, ひいては広葉樹の保残, 導入法が積極的に検討されなければならない。
- 1970-11-25
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