森林植生と土壌との相互作用(II) : 樹木の成分吸収とかんきょうとの関係
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概要
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前報に引きつづいて北海道産主要樹種の葉分析を行なった。石灰含有率をもとにして主要樹種を区分すると, 含有率のたかい方から1群にシナノキ, オオバボダイジュ, カツラ, ハリギリ, オオノキ, アサダ, ヤチダモ, 2群にケヤマハンノキ, ハウチワカエデ, オオモミジ, ウダイカンバ, シラカンバ, 3群にダケカンバ, イタヤカエデ, ミズナラ, 4群にトドマツ, アカエゾマツ, 5群にエゾマツ, ササ類などが, それぞれぞくする。上のような結果から, 同属内の樹種はほぼ同様の石灰含有率をもつことがわかった。前報のシナノキ同様, ハリギリも分布はんいの広いこと, 生育型あるいは利用度のたかいことなどから, 天然林施業における重要樹種のひとつに加えたい。またハンノキ, カバ類は造林方法の容易なことから積極的に造林育成されることがのぞまれる。ササ類の化学組成について検討してみたが, 灰分中硅酸のしめる割合は非常に大きく他の成分は少ない。然しながらササは土壌腐植の主要母材料であるから, その腐植化過程ならびに硅酸の鉱物質化過程は土壌化の方向に大きなえいきょうをおよぼす。従って貧養なササに由来する土壌有機物からいかにして良質な腐植を生成せしめるかという点に注目する必要があろう。含有率と海抜高, 母材, 土壌の性質との関係をしらべたが, ふつうの天然林では何等の傾向もみられなかった。ただ肥培林とか極たんに土壌条件のことなる場合においてのみ含有率に変化をしめしたにすぎない。このことから天然林の貧養性が想定されるのであるが, 果してこれが本質的なものであるか, あるいは土壌処理, 施業法のいかんによっては可給態養分の富化を中核とする地力の増進をはかることができないものかという点について今後検討をすすめてゆきたい。
- 1962-09-25
著者
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