対話翻訳システムのための文脈処理機構とその性能評価
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概要
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日本語の対話文を翻訳するためには,省略を補完したり,照応を同定する文脈処理機構が必要になる.対話文では,省略にも指示語にも,文脈に依存した現象と依存しない現象とがあり,文脈処理機構では,文脈に依存した現象のみを処理することが求められる.また,入力される文脈が乱れた場合にも処理が破綻しないことも要求される.これらの要件を満たす機構として,結束構造(Cohesion)に基づいた文脈解析手法を提案する.入力文が,文脈上のどの文に対する発話であるのかを結束構造知識により捕らえる.この結束構造知識は,形式的に定義できるので,言語データベースを利用すれば,人手を介さず機械的に生成できる.この知識を生成した結果,適合率は90.8%,被覆率は72.5%であり,知識の生成方法が妥当であることを確認した.次に,この知識を,文脈処理機構に応用し,省略の補完や指示語の照応先の同定の実験を行った.その結果,省略の補完には68.9%,指示語の同定には83.3%の成功を収めた.また,文脈に依らない省略や指示語を誤って処理することはなかった.さらに,並列名詞句や一発話中に複数の文が存在し,文と文の対応関係が複雑になる場合に,どの程度対処できるのか調べた(文脈的ロバスト性の実験).これらの実験結果に基づいて,この処理機構の処理能力,および,今後の課題を明らかにする.
- 一般社団法人情報処理学会の論文
- 1992-02-15
著者
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榑松 明
ATR自動翻訳電話研究所
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槫松 明
ATR自動翻訳電話研究所
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工藤 育男
(株)ATR自動翻訳電話研究所
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榑松 明
(株)ATR 自動翻訳電話研究所
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工藤 育男
(株)atr自動翻訳電話研究所((株)csk)
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