百合の所謂バイラス病と寄主との關係
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概要
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本論文に於ては百合の所謂バイラス病と稱せらるるものの病徴が現在では相異なる5つに區別し得らるることを述べ, 同時に其の5つの相異なる病徴と百合の37品種並にフリチラリア Fritillaria の2種類との間の關係を閘明せんとした。5つの相異なる病徴とは(1)葉に緑色濃淡の斑を生ずる事を主徴候となすG.M.(green mottled mosaic, 假稱, 以下同様), (2)葉に黄色絣状條斑を生じ組織の壊疽を合併症状となす Y.M. (yellow streaked mosaic), (3)山百合に特發する急劇落葉性の莖のみ裸となり其の棒状の莖の先端が屈曲して「ステツキ」状となる事を主徴候となす C.N. (crook neck). (4)莖の節間短縮し一般に見る萎縮状を呈するものと, 同じく萎縮状となり且つ葉が下方に捲曲して從來***ーフラツト(yellow flat)と呼ばれ來つたものとを包括する1つの型で, 此兩者は何れも葉に何等の斑點を生ぜず又萎凋する事なく總體的に黄化する處のR.S. (rosette), 及び(5)鐵砲百合に見らるるもので椎葉, 若葉並に花蕾に顯はるる Oedem 状の腫脹現象を主徴候とする P.L. (Pimple leaf)とを指す。是等の病徴と品種との關係は表1の示す通りであつたが, その中で3種以上の病徴を表はした品種は山百合 L. auratum LINDL., 作百合 L. auratum var. platphyllum BAKER, 及び早生鐵砲百合 L. longiflorum formosanum WALL., 黒軸鐵砲百合 L. longflorum gigantenum HORT. であり C.N. は山百合系統にのみ, P.L.は鐵砲百合系統にのみ見られ, 又各品種を通じて一番普通である病徴は G.M. 及び Y.M. で G.M. の方は 37 品種中 20 品種(内5は疑問)に見られ Y.M. の方は 37 品種中 11 品種(内1は疑問)に見られた。又 R.S. 型は鐵砲百合系統のものに於て他の原因に依る被害と紛れ易く最も重親す可きものと推察される。此表は勿論今後の精密な觀察と實驗とを俟つて修正増補さる可き性質のものである。
- 日本植物病理学会の論文
- 1938-03-30
著者
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