稻胡麻葉枯病菌培養中子嚢時代形成
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概要
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稻胡麻葉枯病菌培養中往々小型黒色菌核状物の形成せらるゝは従來認めつゝある事實なれ共、未だ本菌子嚢時代を知られざりき。偶々銹米調査中穀粒より分離せる本菌に於ては葉片より分離せるものの多く不完全なるに反して完全なる子嚢時代を形成することを認めたり。子嚢殻形成には稻藁煎汁寒天培養基最も好適し、最適温度は約二十五度なるが如し。培養四五日にして小自塊を菌絲中に認む。該塊漸吹擴大し中心に黒點を有する灰色塊となり、培養器裏面より覗ふときは黒點となりて見ゆること第二圖版第三圖に示すが如し。子嚢殻は約十五乃至二十日にして、子嚢は大部分二十五乃至三十五日にて成熟す。子嚢殻は黒色、薄擬柔組織よりなり、球形或は扁球形にして、嘴部を有す。高さ 560-950μ, 幅 368-777μあり。子嚢多數にして圓筒形又は長紡錘形、内に一乃至八個、多くは四個又は六個の子嚢胞子を藏す。長さ142乃至235μ, 幅21乃至36μあり。子嚢胞子は糸状又は長橢圓形にして螺旋状に捲曲す。六乃至十五、多くは九乃至十二の隔膜を有し、無色或は淡オリーブ色を呈す。長さ250乃至468μ, 幅6乃至9μあり。本子嚢殻の形態は極めて善く玉蜀黍斑點病菌 Ophiobolus heterostrophus Drech. のそれに類似するも其大さに於て異なり、又兩菌の分生胞子の形態は明かに異なりあり。尚交互接種試驗を行ふも只小形の斑點を生ずるのみにして自然界に於て發病せしむるが如きことなきを認めらる。依りて之れを別種と認むるの妥當なるを信ず。而して本菌を Ophiobolus 屬に納め、共種名として分生胞子時代の種名を採用するを至當とするも、己に本菌と異なる同に同名のものあるにより、茲に新名 Ophiobolu sMiyabeanus を附せり。
- 日本植物病理学会の論文
- 1927-07-20
著者
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