疫病に對する免疫性馬鈴薯に就て
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概要
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本邦に於ける馬鈴薯病害多きが中に疫病の如く惨害を逞くするものなきは海外諸國の例に同じ、本病豫防の方法多しと雖も抵抗性或は免疫性品種の栽培を以て最も安全にして最も經濟的なる方法となすや論なく、北海道農事試驗場は多年斯の如き品種の育成に努め故高橋良直氏及び勝藤孝一氏專ら其事に從ひ多數蒐集の材料中より一品種「疫不知」を撰出するに至れり、予は高橋氏の後を受け本種の改良に關係するに至りしを以て今茲に本種の起源竝に性質を記して一般に紹介する所あらんとす。本品種は疫不知の外、無病薯、高枕、ヒゞ薯、秋薯、竹内薯、惣次郎薯等の地方名を有するものにして千九百三年頃早稻田農園主池田次郎吉海外(佛國か)より馬鈴薯種子を購入し釧路町字西幣舞種子商角田定藏に賣却し更に同人は之れを釧路國鳥取村農民竹内惣次郎竝に同國庶路村農民宮崎平八に賣却し兩人は三年乃至六年間栽培育成して後隣人に頒てるもの即ち疫不知種の濫觴たるが如く、然して從來民間にて疫不知と稱しつゝありしものゝ内には塊莖、花部の性質竝に疫病に對する抵抗性に於て相異なるものゝ混ぜるを認め分離して八型を得たり、其内吾等が眞の疫不知として呼ばんと欲するものゝ特性は次の如し。熟期晩くして豊産、莖は直立し強く、葉は多からすして淡緑、中等大にて強健、塊莖卵形又は楕圓形、扁平ならず、目は少なく、小形にして淺し、皮は白黄色にして著しく網紋ありて粗〓、肉は白色にして堅緻花は白色にして僅かに紫色を帯ぶ。本種が疫病に對して抵抗力の強大なるは多年の圃場試驗竝に實地家の實驗に徴して明かなり、然れ共夏疫病竝に萎縮病に對しては感受性強きは缺點なれど此兩病被害の程度は疫病と同日の談に非らず、尚本種の缺點と認むべきは其味の雪片種に比して遠く及ばざるにあり、依りて良種と交配し改良をなさんことを企圓し巳に北海道農事試驗場に於ては之れが試驗を行ひつゝあるが故に近く理想的良品種を育成し廣く紹介するの期あるべきを信ず。
著者
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