カンキツ葉における癒傷組織形成とかいよう病菌の傷痍感染との関係
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概要
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カンキツ葉における癒傷組織の形成と傷痍部からのかいよう病菌 (Xanthomonas campestris pv. citri (Hasse) Dye) による感染との関係を調べた。低湿度 (R. H. 20〜50%) の人工照明定温器内に保った葉では, 傷痍部から5〜6層内部の細胞で葉緑体の消失, 細胞肥大, 細胞分裂がみられ, 薄層状の分裂組織が形成された。付傷部は, 付傷直後には著しく感受性が高かったが, 分裂組織が形成されるとほとんど感受性を示さなくなった。湿潤状態に保った切り取り葉では, 傷痍部から5〜6層内部までの大部分の細胞で葉緑体が消失し, 肥大, 細胞分裂がみられたが, 薄層状の分裂組織の形成は認められなかった。このような傷痍組織は感受性が高く, その後, 外側の細胞層の細胞壁にリグニンが集積するまで高率に感染した。付傷後の感受性期間は, 低湿状態に保持したものに比べ湿潤状態に保ったものは約2倍長かった。癒傷組織の形成は温度と密接に関係し, 30〜35Cの高温で2〜3, 温度が低下するに従って遅延し, 15Cで約10日, 10Cでは約30日を要した。ほ場のカンキツ着生葉に付傷してその後の感受性期間を調べた結果, 1月〜3月上旬の付傷では20〜30日, 3月中旬〜4月の付傷では約10日間, 高い感受性を示した。以上のことから, 強風その他の傷を生じる要因は降雨をともなわない場合でも, 本病の重要なまん延促進要因であることが判明した。
- 日本植物病理学会の論文
- 1983-07-25
著者
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