とりたて詞の階層性について : 動詞句及びスコープを手がかりとして
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
「とりたて詞の階層性」とは,「とりたて詞」という一つのカテゴリーと,個々のとりたて詞の文の階層構造への位置付けとを重ね合わせることで浮かび上がる,とりたて詞の階層上の広がりのあり方を指す。本発表では,このとりたて詞の階層性を扱う際の一つの指標として,「動詞句」という単位と「スコープ(意味的作用域)」の概念に着目した分析方法を提案し,とりたて詞「だけ」「まで」「は」「さえ」「も」を対象とした分析を行う。本発表の分析で扱われる現象は,次に挙げる,(1)補助動詞のスコープテスト,(2)「さえ」焦点化テスト,(3)否定のスコープテスト,(4)否定文における数量詞テスト,の四点である(右のカッコ内は観察の結果導かれる上記五つのとりたて詞の区分)。(1)花子は,[V2 ケーキ{だけ(を)/^??も}食べ]過ぎた。 (だけ|まで・は・さえ・も)(2)花子は,〈モ 太郎に{だけ/^??さえ}そのことを打ち明け〉もした。((3)と同結果)(3)花子は,[VP ケーキ{だけ(を)/^*も}食べ]なかった。(だけ・まで|は・さえ・も)(4)〈サエ/ハ いくつかの問題を解き〉{さえ/^??は}しなかった。 (は|さえ・も)(1)〜(3)の観察結果において特に問題となるのは,本来的には動詞句内にあると考えられる要素が,とりたて詞が後接することで意味解釈上述語要素のスコープに入らなくなるという点であるが,このギャップを埋めるものとして,とりたて詞の後接によって起こる,上の階層への要素の「繰り上げ」のプロセスが仮定される。上の(1)〜(4)から得られるとりたて詞の区分は,「だけ|まで|は|さえ・も」というものであるが,この区分がそれぞれのとりたて詞の文階層構造上の位置に対応した「とりたて詞の階層」である。このような階層は,また,とりたて詞相互あるいはとりたて詞と述語連用形等の承接の可能性の問題とも関連付けられることが指摘される。
- 2001-03-31
著者
関連論文
- 徳島方言動詞「はめる」の意味分析
- 徳島方言動詞「つまえる」の意味分析
- 徳島方言動詞「めげる」の意味分析 : 意味記述と世代差の分析を中心に
- 「しか」の語順現象をめぐって
- 接続助詞のスタイルをどう捉えるか : 母語話者の意識調査とコーパスの分析から
- 世界の言語研究所(18)スロベニアの言語研究所と言語資源(スロベニア)
- 世界の言語研究所(18)スロベニアの言語研究所と言語資源(スロベニア)
- 学部基礎教育と留学生教育の共同授業の試み
- 目的を表す「ないために」の実態
- 「そのもの」の用法と意味
- テノ名詞句の意味と形式
- 累加の接続詞「あと」をめぐって
- 名詞句内のとりたて詞「ばかり」について
- 「ばかり」文の解釈をめぐって
- 「にしか過ぎない」考
- とりたて詞の階層性について : 動詞句及びスコープを手がかりとして
- 順序助詞句「AからBまで」について
- とりたて詞「まで」「さえ」について -否定との関わりから-
- 国会会議録を使ったことばの分析 (特集 政治とことば)
- 日本語研究論文情報の電子化の実態と論文探索スキル
- 電子化された日本語研究論文の流通実態と問題点
- 小学校国語教科書における「言動活動力」カリキュラムの検討 : 光村図書・6年(平成23年度版)『創造』の場合
- 小中の連続性をふまえた小学校古典カリキュラムの開発
- 電子化された日本語研究論文の流通実態と「つなぐ」文献目録によるアクセス支援
- 小中の連続性をふまえた小学校古典授業の開発