複合によって語中に生じた母音連続における母音の脱落
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概要
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上代日本語における母音脱落がいかなる原理で起きているのかについて筆者は四つの法則を設けてこれを説明したが、若干の例外を別の原理で説明するという問題を残した。本誌199集の佐野宏論文は、筆者が、別の原理で説明した例外と、法則(4)で説明した例とを、法則(1)(2)(3)に従って生まれた形に類推して生まれたものと説明した。本稿は、旧著で設けた法則を検討し直すこと、特に法則(3)の重音の範囲を見直すことによって、「ワガへ」と「ワギへ」の関係についての新しい解釈を提出し、法則(1)(2)(3)で説明できない例が、前部要素が一音節の助詞である例だけになり、法則(4)で説明できることを述べる。そして、語形の一部が損傷した望ましくない脱落形、それ故に中古になると生じなくなる脱落形が、抑止されることはあっても、類推によって盛んに作り出されたとは考えにくいことから、類推説を退け、法則(4)が有効であるとする。
- 日本語学会の論文
- 2003-01-01
著者
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