日本学術振興會における磨耗の機構の研究(第 4 報) : (その 2)磨耗機構の研究 : (第 4 報)炭素鋼の機械的、物理的並に化学的諸性質と磨耗との関係
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概要
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前報告中に詳細説明せる如く磨耗には機械的破壊磨耗、酸化磨耗及び熔融磨耗の3種の磨耗が存在し、夫々全く異なつた機構の下に磨耗を発生するものであるにも拘らず磨耗とその材料の性質との関係に関する従耒の研究を顧みるにこの事を全く顧慮せずに凡てを單に磨耗として取扱つてゐる。著者はこの問題の觧決の困難さはこゝにあるであらうと考へたので種々の炭素含有量の炭素鋼を試驗材料として選び、その磨耗を上記の3種類の磨耗に分けて取扱ひ、これ等3種の磨耗が夫々その材質の如何なる性質と密接なる関係にあるかを吟味した。その結果次の様な事を確かめた。(1) 機械的破壊磨耗はその材料の硬度、引張強さ、延伸率、抗剪力等との間には余り明瞭なる関係を示さないが引張破壊における仕事量並に剪断破壊における仕事量との間には密接な関係があり、殊にアイゾット衝撃値との間には双極線的関係があり、アイゾット衝撃値小なるものは機械的破壊磨耗量多く同衝撃値の大なるものは機械的破壊磨耗量が少い。(2) 酸化磨耗は硬度、引張強さ、抗剪力と大体反比例し、これ等の値の大なるもの程酸化磨耗量は少く、酸化磨耗に関する限り、硬いもの程磨耗し難いと云ふ磨耗に関する吾人の一般的概念は正當である。又酸化磨耗はその材料の酸による腐蝕と密接なる関係があり、腐蝕の激しく発生するものは酸化磨耗を起し易く、腐蝕し難いものは酸化磨耗の外に一部機械的破壊磨耗を併発し易い。(3) 熔融磨耗はその材料の熔融点と熱傳導率とに依て左右され、熔融点低く、熱傳導率不良なもの程熔融磨耗を起し易く、熔融点高く、熱傳導率良好なもの程熔融磨耗の外に一部機械的破壊磨耗を併発し易い。熔融磨耗量は大体熱傳導率の逆数によつて直線的に増減する。
- 1943-07-30
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