海星類の生殖習性と幼生形態との関係および雛胞胚について
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概要
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海星類の生殖習性は区々であるが,卵が小形で,卵黄が少なく,ウニ類の卵のように,間接発生型でビピンナリア幼生を生ずる類から,多卵黄卵で,浮游性のビピンナリア幼生期を欠き,卵が保護あるいは保育される直接発生壁の類まで,その習性はそれらの種の系統的位置と無関係に大体通続的な6群に大別することができる。それらの種の幼生の形態はその生殖習性と一定の関係があり,同一の習性を有する種はそれぞれ類似した形態の幼生を有し,幼生の類似はそれらの種の系統的類縁よりも,むしろ環境適応の意味をもつものと考えられる。一方,海星類の雛胞胚の出現は一見不定のように見えるが,これは卵の大形化,卵黄の蓄積と関係があるのではないかと考えられる。しかし,イトマキヒトデ,モミジガイなどの貧卵黄卵で,典型的なビピンナリア幼生を有する類の雛胞胚の出現は,上記の推定では説明ができない。しかし,次の仮定によって,ある程度説明が可能となるであろう。現在,多卵黄卵をもち,保護,HO育性の種は冷水域,特に南極洋,北太平洋,深海に見出されており,卵黄の蓄積が,その種の過去における,特に氷河期の,水冷適応の結果と関係があるのではないか。そうして,卵黄の蓄積が雛胞胚形成を招来するのではないか。イトマキヒトデなど数種の初期発生において,短時間であるが出現する雛胞胚はそれらの種が,過去において,卵黄を蓄積した証拠を示すものではないか。その後,再び温暖適応の結果,貪卵黄卵に逆戻ドをして,自由幼生を生ずるようになったものと考えることができる。一方,貪卵黄卵で,同様にビピンナリア幼生をもちながら,雛胞胚期を欠くAsteriasなどの類は現在北大平作等の冷水域に分有する類であるが,モれらの種は過去において,氷河期においても,発生様式を変化することなしに,比較的寒冷地域に棲息して,現在に至っているのではないか。その発生様式はヒトデ類の原型的なものを示しているのではないかと考えられる。
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