上皮性卵巣腫瘍および類皮嚢胞腫におけるエストロゲン産生能

概要

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従来、ホルモン産生腫瘍の範ちゅうに入っていなかった各種上皮性卵巣腫瘍および類皮嚢胞腫を対象に、それらのエストロゲン産生能について検討した。卵巣腫瘍合併患者の術前、後の末梢血中estradio1(E2)値の測定、ならびに膣スメア像、子宮内膜組織像の検討も行つた。その結果、1)閉経後症例16例の術前血清E2値の平均は、230.9±248.5pg/mlを示し、同年代のコントローノレ(12.3±3.6pg/ml)に比べ、有意に高値を示した(p<0.01)。またE2値のfollow upを行いえた11症例のうち7例(63.6%)が、術後にE2値の明らかな低下を認めた。2)閉経前症例28例の術前血清E2値(卵胞期初期に採血)の平均は、135.6±148.8pg/mlを示し、卵胞期健常婦人の正常値に比べ明らかに高値を示した。また、このうち20例中8例(40.0%)に術後E2値の明らかな低下がみられた。3)44例の閉経後卵巣腫瘍合併例の膣スメア像の検討では、各年代とも核濃縮指数(KPI)は平均15〜23%と比較的高値を示し、また成熟指数(MI)もコソトローノレに比べ右方移動の傾向を示した。4)23例の閉経後卵巣腫瘍合併症例の子宮内膜組織像の検討では、増殖期内膜5例(21.7%)、嚢胞性増殖3例(13.0%)、腺腫様増殖2例(8.7%)であつた。5)血清E2値と腫瘍体積との関係では、体積の増加に伴い、血清E2値も高値を示す傾向が認められた(相関係数0.57)。6)組織型別では、ムチソ性腫瘍や類皮嚢胞腫でE2産生著明な症例が多く、一方、漿液性腫瘍では低頻度であった。また、腫瘍の良性、悪性別では有意差は認められなかつた。以上の結果より、ムチソ性腫瘍をはじめとする上皮性卵巣腫瘍や、類皮嚢胞腫の中にもかなりの頻度でE2産生能を有するものが存在することが確認され、ホノレモン産生の機序など、細胞生物学的興味に加え、E2をはじめとするステロイドホルモンが腫瘍マーカーのひとつとなり得る可能性が示唆された。
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1986-03-01

上皮性卵巣腫瘍および類皮嚢胞腫におけるエストロゲン産生能

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