羊水中胎児肺サーファクタントアポ蛋白測定による胎児肺成熟診断
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概要
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従来,肺サーファクタントは,主として脂質面から検討されてきたが,今回,そのアポ蛋白面からの研究を試みた.その要旨は次のとおりである.ショ糖密度勾配超遠心法を用いてヒト肺洗浄液,ならびに羊水から分離したサーファクタント分画には,数種の蛋白が混在する.その中に,標準ヒト血清には認められない蛋白が存在した.分子量既知の標準蛋白を用いたSDS-polyacrylamide gel electrophoresisにより,それらの分子量は,約36,000daltons,約16,000daltonsで従来の報告とあわせて肺サーファクタントアポ蛋白であろうと思われた.このアポ蛋白が肺サーファクタントに特異的であることから,肺サーファクタント分画(肺サと略す),羊水中肺サーファクタント分画(羊サと略す)を家兎に免疫して,これらに対する抗血清を作成した.次に,二元拡散法,免疫電気泳動法で抗血清の特異性を確認した.その結果,肺サ,羊サは,免疫学的に同一のものであると判断することができた.抗肺サ家兎血清を用いて,免疫学的に羊サを測定し,胎児肺成熟診断を試みた.方法としては,定量的免疫電気泳動法であるLaurell rocket法を用いた.サーファクタントアポ蛋白が羊水中に認められるのは,妊娠32週頃で,妊娠36週に著しく増加する傾向を示した.胎児肺成熟診断法であるshake test,羊水中Disaturated lecithin(DSL)濃度と羊サアポ蛋白量との関係を検討した.shake testとは,相関係数0.76,DSLとは,相関係数0.61で,いずれも1%の危険率で有意の相関を示した.胎便,血液混入による混濁羊水については,shake test,DSLが高値を示す傾向があり,Laurell rocket法による値との解離の原因となった.サーファクタントアポ蛋白の特異性を利用したLaurell rocket法は,試料に影響されない方法として極めてすぐれた診断法といえる.しかし,診断の簡易,迅速性という点からみると,日常の臨床検査としては問題がある.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1982-07-01
著者
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