組織発生を中心とした実験卵巣腫瘍の病理形態学的研究
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概要
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Sprague-Dawley系雌ラット129匹を,(1)下垂体剔除(垂剔)+7,12-dimethylbenz(a)anthracene(DMBA),(2)垂剔十DMBA+片側卵巣易剔除,(3)DMRA、(4)DMBA十片側卵巣剔除,(5)垂剔のみの対照群,(6)無処置群の6群にわけ,溶解したDMBAを絹糸に浸し,clipping法で卵巣実質内に正確に埋没後,20,30,40週の腫瘍発生過程を経時的に検索した.又発生した腫瘍とホルモンとの関連性をみるため,血清estrogen及びprogesteroneの測定を併せ行った.発生した腫瘍の組織型は大部分が腺癌で,週数の経過に伴って増加の傾向がみられ垂剔+DMBA及び垂剔+DMBA+片側卵巣剔除群に増加の傾向がみられた.腺癌発生過程の検索に当たって,ラット正常卵巣組織の連続切片の観察を行ったが,その結果,(1)卵巣門部に明らかな腺組織が認められ,(2)この腺組織一部には表層上皮と連続性のあるものもみられたが,大部分のものは盲端となっており,(3)卵管とは非連続性で,(4)卵管は卵巣の実質内には入っていないことがわかった.実験群のDMBA処置群に卵巣門部の腺組織の腺腫様増殖を認め,短期長期実験例ともに,癌巣はDMBA絹糸挿入部周囲の線維化巣内に認められるものが多かった.増殖する組織の上皮細胞は卵管や子宮におけるものとは異なり,正常卵巣門部腺組織に極めて類似していること,ならびにDMBA投与により,これら腺組織が増殖して,上皮細胞に異型をきたし癌化していく過程を病理形態学的に確認し,卵巣上皮性腫瘍の一部は卵巣門部の腺組織が重要な役割を果たしていることが強く示唆された.尚,各実験動物の血清estrogen及びprogesteroneの測定を行ったが,発生した腫瘍との関連については特に有意の所見は認め得なかった.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1979-09-01
著者
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