マウス腎被膜下移植妊卵より分化発育した trophoblast の組織学的検討
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概要
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Trophoblast (以下tr.) は他の組織細胞と異り, 宿主によって拒絶されない. このことより, tr.が胎児を母体による拒絶反応から防禦しているのではないかと考えられている. しかし, tr.がなぜ拒絶されないかについては, 現在2説が相対立していて意見の一致をみていない. そこで今回著者はこの問題を解明する一段階として, マウス腎被膜下に移植した妊卵より分化したtr. (以下, 腎被膜下tr.) を組織化学的ならびに電顕的に検討してみた. その結果, 腎被膜下tr. の細胞内超微細構造は子宮内胎盤の giant cell のそれと同じであった. すなわち, (1) 大型の核を有し, (2) かなり豊富なミトコンドリア中に, ステロイド産生細胞に特有な特徴あるものが存在し, (3) 粗面小胞体も豊富で, (4) よく発達した Golgi 装置を有し, その周辺には小顆粒が認められ, (5) 中性粘液多糖類の顆粒や脂肪顆粒が豊富で, その他に(6)リボゾーム, グリコーゲン顆粒やフィラメントも認められ, (7) 細胞遊離縁には発達した微絨毛が見られた. 以上の所見はヒトをも含めた他の hemochorial placenta の tr. に大体共通した所見であった. これら共通の所見がtr.が拒絶されない理由に関係あるか否かを, 主としてtr.によって産生されるホルモンの面から探り, 現時点での問題点を提起してみた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1974-11-01
著者
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