免疫学的防壁としてのトロホブラストの役割に関する実験的研究
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概要
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移殖免疫学的見地からみると,妊娠は自然に成功した胎児の母体への移殖と云える.その成功の機序を解明する為,Medawarの仮説に従って実験を進めた結果,以下の結論に達した.1)胎児(妊卵)には,受精後間もなく拒絶されうべき組織適合抗原が存在する.2)妊娠母体の細胞性免疫能は低下しているが,その程度は軽微なものである.3) 正常の条件下ではトロホブラストは拒絶されない.その理由としては,トロホブラスト細胞膜上に,容易に拒絶反応の対象となる形で組織適合抗原が存在しないことに困ると考えられ,トロホブラストがフィブリノイドを始めとするextracellular materialsで被われている為ではない.4) 以上より,胎児が拒絶されないのはトロホブラストが母体の拒絶反応に対する防壁となっていることが主因と考えられ,それに母体の免疫能の低下が補助的な役割を果たしていると考えられる.従って,この分野での今後の最重要課題は,トロホブラストの細胞膜構成々分の分子レベルでの解析だと云える.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1979-03-01
著者
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