部分胞状奇胎に関する細胞遺伝子学的,形態学的ならびに臨床的研究
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概要
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部分奇胎の病態について,特に発生機序や予後に関する全奇胎との相違点を明らかにし,部分奇胎に対する臨床的管理法を確立する目的で,部分奇胎57例(うち双胎例:3例)について染色体核型,受精機序,形態学的所見と臨床所見の各種検討を行い以下の結果を得た. 1) 双胎例を除く54例中46例(85.2%)が3倍体で,8例は2倍体であった.受精機序の検討が可能であった2倍体部分奇胎3例中2例は通常の受精による例であることが同定されたが,1例は同定不能であった. 2) 双胎例のうち2例では奇胎嚢胞部分と正常胎盤,胎児とは肉眼的に明瞭に区分され,奇胎部分はいずれも46,XXを示す雄核発生例であり,一方正常胎盤,胎児は通常の受精による2倍体と同定され,全奇胎と正常妊卵との双胎であることが判明した. 3) 3倍体や2倍体(単胎)部分奇胎では全奇胎とは異なって胎芽(児)が26.9%,臍帯が9.6%に認められ,また胎芽非共存例でも組織学的検索で半数以上の例に赤芽球をう血管が観察された.さらに3倍体では絨毛の嚢胞化と妊娠期間との間に強い相関を認め,3倍体部分奇胎は一種のmissed abortionであると推定された. 4) 娩出後に一次管理を行った23例のうち,全奇胎との双胎例であった1例に侵入奇胎が続発したが,他の22例では尿中hCG値の推移は順調であった.また娩出後1〜9年にわたる追跡調査(48例)でもすべて予後良好で続発症は皆無であった.以上の結果から部分奇胎は,1) 3倍体,2) 通常の受精による2倍体,3) 全奇胎との双胎例の3群に分類され,部分奇胎の大部分を占める前2者はその受精機序,発生過程等が全奇胎とは本質的に異なっており,予後も良好であることが判明した.したがって臨床的には稀にみられる全奇胎との双胎例を正しく診断し管理する事が重要となるが,その他の部分奇胎に対しては特別な管理は行わなくてもよいと考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1985-07-01
著者
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