切迫早産・前期破水例における羊水中サイトカイン測定の意義
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概要
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絨毛羊膜炎, 子宮内胎児感染の早期診断および重症度判定の目的で切迫早産58例, 前期破水21例, 妊娠正期予定帝切34例の羊水穿刺により得られた羊水中TNFα, IL-1β, IL-6の測定を行い, 以下の結果を得た. 1. 妊娠正期予定帝切例の羊水中TNF-α, IL-1β, IL-6濃度はそれぞれ22.8±19.2pg/ml, 8.1±5.2pg/ml, 166.8±126.1pg/ml (Mean±SD) であつた. 2. 子宮収縮抑制剤に抵抗性で, 羊水穿刺後48時間以内に分娩に至つた例の羊水中TNF-α, IL-1β, IL-6濃度は, それぞれ839.9±146.2pg/ml, 674.1±163.9pg/ml, 27.70±8.53ng/ml (Mean±SE) で, 妊娠延長が48時間以上可能であつた例に比べ有意に高値を示した. 3. 羊水穿刺後24時間以内に分娩に至つた例の胎盤病理所見はBlancの分類でいずれもstage II以上であつた. stageIIであつた10例の羊水中TNF-α, IL-1β, IL-6濃度は, それぞれ590.5±304.9pg/ml, 76.6±20.1pg/ml, 5.22±0.92ng/mlであつた. stageIIIの24例ではそれぞれ1.09±0.19ng/ml, 1.36±0.41ng/ml, 31.98±4.55ng/mlであり, IL-1β, IL-6濃度はstage IIに比し有意に高値を示した. なお各stageでいずれも未破水例と破水例の間には有意差を認めなかつた. 4. 中山の臍帯炎stage分類では, 羊水中TNF-αには各stage間に有意差を認めないが, 羊水中IL-1β, IL-6濃度については, stage 0とstage Iおよびstage IIとstage IIIの間において有意差を認めた. 以上のことから羊水中サイトカインの測定が絨毛羊膜炎, 子宮内胎児感染の早期発見, 予後および重症度判定に極めて有用で特に羊水中IL-6濃度が臨床所見および胎盤, 臍帯の病理所見を最も反映していると考えられた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1993-04-01
著者
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