生後8ヵ月の乳女児に発生したmalignant mesonephric tumorの症例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
我々は生後8ヵ月の乳女児に発生した悪性腫瘍が, 病理組織学的に、malignant mesonephric tumorと診断された稀な症例を経験したので報告する. 生後8ヵ月の女児が微量***出血を訴えて来院した. その子宮腟部に既に骨盤壁にまで達している過鶏卵大の腫瘍を認め, その一部が崩壊して腟口より排出された. これを病理組織学的に検索すると, 腫瘍細胞は低立方状で, 原形質は明るく, 核は円形又は楕円形で1〜数個の核小体を有し, クロマチンは粗で比較的淡明であり, クロマチン網は種々の程度に異型性を示し, 多数の核分裂像を認める. かゝる腫瘍細胞は管状に配列し, 管腔内に向ってpeg-like tuftingを示している. 以上の病理組織学的所見は定型的なmesonephroma of Schiller's typeと全く一致している. 放射線治療を計画したが患者側が拒否して退院し, 約1ヵ月後死亡が確認された. 比の症例は発生部位が子宮腟部辺であるので卵巣に於ける本症の如き診断上の疑点はないと考える. しかし剖検出来なかったので他部位の病変の有無は不明である. 又同様の理由で他にSaphir及びLachnerのclear cell Adenocarcinoma typeの混在も完全には否定出来ない. 日本ではまだmalignant mesonephromaの報告が一例もなく, 我々のこの症例が日本に於ける最初の症例である.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1965-07-01
著者
-
服部 龍夫
京都大学産科婦人科学教室
-
後藤 忠雄
静岡県立中央
-
上杉 セツ子
静岡県立中央
-
後藤 忠雄
静岡県立中央病院産婦人科
-
上杉 雄二
静岡県立中央病院
-
服部 竜夫
静岡県立中央病院 産科婦人科
関連論文
- 妊娠個体の必須脂酸代謝に関する実験的研究 : 第2編 絨毛組織,〓帯血血清,胎児肝における必須脂酸代謝について
- 妊娠個体の必須脂酸代謝に関する実験的研究 : 第1編 母体血血清における必須脂酸代謝について
- 36. diazepamの婦人自律神経失調症に対する治療効果
- 78.妊娠個体の必須脂酸代謝に関する実験的研究(第1報)ウィスター系妊娠白鼠におけるコレステリンエステル必須脂酸の高脂肪食投与による影響
- 78.妊娠個体の必須脂酸代謝に関する実験的研究 第1報 : ウイスター系妊娠白鼠におけるコレステリンエステル必須脂酸の高脂肪食投与による影響
- 膀胱腟中隔部に発生した線維筋腫の1例
- 帝王切開分娩 (シンポジウム・帝王切開分娩)
- 特発性血小板減少症(ITP)を合併した子宮頚癌(lb)の手術例
- 134. norethisterone acetate徴量内服による経口避妊時の子宮内膜組織像 (昭和45年臨床大会講演要旨)
- 81. Cyclandelate の冷感症 (附 腰痛) に対する治験成績 ( 第II群 婦人科領域)
- 22. 子宮癌根治手術後及び子宮癌末期外科的腎不全に対する一時的腎、尿管皮膚瘻設置術の評価
- 産婦人科領域における腟内塗抹細胞 (一部捺印塗抹細胞) 組織切片及び培養細胞の核内DNA定量に関する研究
- 原発性卵管肉腫の症例
- 49. 炎症緩解用経口酵素剤キモタブ錠の子宮附属器炎及び婦人科手術後硬結に対する治療効果
- 生後8ヵ月の乳女児に発生したmalignant mesonephric tumorの症例
- 3. 妊娠個体の糖質代謝並びに脂質代謝に関する研究
- Bacampicillinの婦人科内***感染症における臨床成績 (Bacampicillin)