血漿中の抗プラズミンと抗トリプシンとの関係
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概要
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血漿中の抗プラズミンはfibrinolysisの発現に対してactivating factorsと同じ比重で重要な因子である. また, 産婦人科領域では分娩時の低線維素原血症や弛緩出血や機能性子宮出血とも密接な関係があるので, これらの疾患の際にしばしば抗プラズミンを測定する必要に迫られる. しかし, 抗プラズミンの測定は理論的に簡単であるが, 実際には純粋のプラズミンや線維素原を入手することが困難なために再現性ある成績を得ることが難しい. そこで抗トリプシン活性を測定することによって抗プラズミン活性を推測しようという試みが従来しばしば行なわれているが, かかることが果して許されるものかどうかについて検討を加えてみた. 血漿を硫安で半飽和し, その上清と沈殿からsephadexにより硫安を除き, さらにDEAE-celluloseによるカラムクロマトグラフを行なった, 溶出にはpH7.8, 0.0175M; pH7.16, 0.04M; pH6.64, 0.1M; PH5.24, 0.3Mの燐酸カリ緩衝液および2Mの食塩水を含む0.3M第1燐酸カリ溶液を用いた. 最近は後2者の代りにIMの食塩を含む0.0025M塩酸液を用いている. 各溶出液について, 蛋白濃度は275mμで, 抗プラズミン活性は線維素分解法で, 抗トリプシン活性はカゼイン分解で測定した, 抗プラズミン活性が最も強いのは, pH7.16, 0.04Mの燐酸緩衝液で溶出される分屑であったが, この分屑は同時に抗トリプシン作用も持っていた. また, 抗トリプシン作用が強いのは, pH6.64, 0.1Mの緩衝液で溶出される分屑であったが, この分屑には抗プラズミン作用を認めなかった. また, 僅か乍ら, 最終溶出液による分屑の中にも抗プラズミンおよび抗トリプシン活性を認めた. 以上のような結果から考えると, 抗トリプシン活性を測定して, これを直ちに抗プラズミン活性と断定することは出来ない. すなわち, 抗トリプシン活性は抗プラズミン活性のdirect indicatorとはならない. しかし, 経験的には血漿抗トリプシンと抗プラズミンとは密接な関係があることが知られているので, indirect indicatorであるといえると思う.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1963-10-01
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