子宮腟部びらんに関する臨床病理学的研究
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概要
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子宮癌集団検診を受診した子宮癌でない女性の, 子宮腟部の肉眼的及びコルポスコープによる観察と, 子宮腟部の病理組織学的所見から, 子宮腟部びらんの成因と, その臨床的意義について考察した. 子宮腟部びらんの頻度と年令との関係をみると, 20才代に急増し, 大なるびらんも多く, その後, 年令の推移と共に漸減し, 大きなびらんも減少する. コルポスコープ所見では, 転位帯は20才代に最も多く, 以後, 年令が増すと共に漸減し, 転位帯と変換帯の合併した所見は, 少しおくれて30才代, 40才代に多く, 年令の推移と共に変換帯の頻度が増加する. 真びらんは極めて少なく, 子宮腟部びらんに主な役割を演じているとは考えられない. 組織学的に reserve cell の出現, 増殖から, 扁平上皮化生の途上と思われる所見は, 20才代, 30才代で高率にみられ, それ以後漸減し, 完全な扁平上皮生化の像は, ほとんど年令による変化なく認められた. 女性が成熟期に入ると, 子宮腟部の肥大による外反によつて子宮腟部びらんが起り, その発現と共に頚管円柱上皮の扁平上皮化生が反復して起り, 閉経後は, 子宮腟部の萎縮と共に, 扁平円柱上皮境界が頚管内に退縮するのが, 一般的な経過と考えられる. 子宮腟部びらんは, 反復した扁平上皮化生による修復の必要から, reserve cell の増殖を促すと思われ, 異型増殖を起す機会をも増す事は否定できず, 間接的に子宮癌の発生と関係を有すると考えられるが, その好発年令と, reserve cell の増殖のさかんな年令との間には, 若干のずれがあり, 一元論的な説明は不可能で, 今後の研究に待たねばならない.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1973-01-01
著者
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