多嚢胞性卵巣の臨床内分泌学的研究
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概要
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典型的なStein-Leventhal症候群が認め難いわが国の多嚢胞性卵巣について,17例を対象に正常月経周期婦人10例とともに,副腎抑制・卵巣刺激試験を中心に内分泌学的な検討を行つた結果つぎのような特徴が認められた.(1) estrogen値:HMG投与後,多嚢胞性卵巣では12例が150μg/day以上の過剰増量反応を示し,残り5例は正常群(最高121μg/day,最低25μg/day)と同程度の増量を示すにとどまつた.(2) 総17-KS値:副腎抑制前までは正常群とほゞ同程度の値を示したが,副腎抑制後では大部分が正常群より高値を示した.この傾向はHMGの投与によりさらに著明になつた.(3) 卵巣性17-KS値:副腎抑制後正常群では0.4mg/day以下であるが,多嚢胞性卵巣では15例が0.5mg/day以上の高値を示した.なおestrogen非過剰反応群も卵巣性androgenの排泄が多い傾向が認められた.(4) 卵巣の組織学的特徴:卵巣の楔型切除標本について内莢膜細胞層の組織占有率を算出しhyperthecosisの程度をみると,HMG投与後のestrogen値とほゞ相関する傾向がみられた.(5) 卵巣楔型切除の効果:両側卵巣の楔型切除によつて症例の75%が術後2ヵ月以内に排卵性月経の発来をみたが,残りの症例は卵巣性17-KS値が1.5mg/day以上の高値を示し,排卵誘発剤の併用によつて排卵が促進された.以上の結果から男化徴候の顕著でない本邦婦人の多嚢胞性卵巣でも,正常婦人に比べて卵巣性androgenの分泌が多いことを知つた.HMGの負荷試験では卵巣性androgenが対照例より著明な増加を示すとともに尿中estrogen排泄量も増加を示し,かつ大部分の症例でestrogenの過剰増量反応を示すことが認められた.これらの成績からglucocorticoid投与による副腎性steroid hormone産生抑制の反応態度,およびHMG負荷による卵巣刺激試験を実施して得られた尿中estrogen量および卵巣性17-KSの動態によつて多嚢胞性卵巣の臨床的鑑別診断がある程度可能であることが明らかになつた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1971-10-01
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