人卵巣の電子顕微鏡的研究 : 特に人胎児卵巣及び成熟婦人発育卵胞の微細構造

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胎生5ヵ月,6ヵ月,8ヵ月,10ヵ月人胎児卵巣及び成熟婦人卵巣を対象として,胚上皮の微細構造及び白膜の態度,卵原細胞から発育卵胞に至る卵細胞の発育過程,卵胞上皮細胞の発生,発育過程及び卵細胞との関係,透明帯の発生時期と透明帯物質の産成機転,莢膜細胞の発生,発育機転,発育卵胞に於ける卵胞液産成などの問題を電子顕微鏡的に解明せんとして本研究を行なつた. 1) 胚上皮層:胚上皮細胞と少数の卵細胞よりなる.前者は多数のmicrovilli, cilia,中心小体及び細胞質内微細線維様構造が特徴的である.卵細胞は胎生5ヵ月では卵原細胞に,胎生10ヵ月では卵母細胞に一致する構造を示す. 2) 卵細胞:卵胞の発育と相関的に細胞質小器官の漸進的変化が見られた.最も未熟な卵原細胞に於て,大型の核,その周囲に花輪状に配列する糸粒体が特徴的である.卵母細胞に於ては豊富な小胞体,糸粒体の増加とその特異的な形態,多数のGolgi野が見られ,卵胞上皮細胞との細胞間隙の拡大と共にmicrovilliを突出する.両者間にはsyncytialな関係は見られない. 3) 卵胞上皮細胞:卵胞上皮細胞に由来する.卵胞発育と共に数を増し,粗面小胞体が特異的に変化する. 4) 透明帯:一次卵胞初期に形成され,透明帯物質は卵胞上皮細胞に由来すると考える. 5) 莢膜細胞:卵巣間質細胞に由来し,特に内莢膜細胞は著明に変化する.発育卵胞の時期に於てsteroid産成に関係ありと思われる構造を呈する. 6) 卵胞液:発育卵胞に於ては,卵胞腔に面する顆粒膜細胞の突起或は嚢状の突出があり,その遊離或いは限界膜の破綻により,卵胞液が形成されると考える. 7) Call-Exner小体は基底膜が特殊な形態を呈したものと考える.透明帯物質産成に関係があると思われる.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1967-02-01

人卵巣の電子顕微鏡的研究 : 特に人胎児卵巣及び成熟婦人発育卵胞の微細構造

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