羊水診断の意義と穿刺後出生児の追跡調査

概要

論文の詳細を見る
名古屋市立大学医学部附属病院産婦人科において1971年10月から1977年4月までの約5年半の間に行つた羊水穿刺による遺伝性疾患の出生前診断の成果と,1973年3月より開始した羊水診断後出生児の追跡調査結果を総合的に検討し以下の成績が得られた. 1) この間に204妊娠(176名)に対して羊水穿刺を行い2妊娠を除いた全てにおいて診断結果が得られた.穿刺を受けた理由のうち染色体に関するものが197例,代謝異常5例,その他2例であつた. 2) 診断結果の得られた202妊娠のうち14例に染色体異常児,1例に代謝異常児が検出され染色体異常児の妊娠は人工的に中絶された. 3) 診断の誤りは2例(染色体1例,代謝異常1例)であつた. 4) 羊水穿刺の合併症についての検討では穿刺前の超音波診断装置の併用群において合併症の出現頻度に著しい減少がみられた. 5) 合併症のうち,自然流産率は2.0%,早産率は2.5%で一般頻度と比べて高くなかつた. 6) 羊水穿刺後2例に***出血をみたがその他の妊娠・分娩時合併症の頻度は高くなかつた. 7) 低出生体重児,SFD,巨大児の頻度においても一般と差がみられなかつた. 8) 満期産児の出生時体位は昭和45年度厚生省値と差はなくその身体発育,精神発達も一般乳幼児と変りなく良好である. 9) 羊水診断後出生児に認められた異常には,脳性麻痺1例,先天性心疾患1例,股関節亜脱臼1例がみられたがその出現率については症例を増して検討する必要がある.この他2例に胎児穿刺を疑わせる症例がみられたが神経的な異常は認めていない. 10) 以上,羊水診断の有益性と危険性とを比較した場合,妊娠中においても出生児の追跡調査でも特別な異常がみられていないことより有益性が優つておりこの診断法が臨床上意義あるものであることが明らかにされた.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1978-03-01

羊水診断の意義と穿刺後出生児の追跡調査

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク