慢性糸球体腎炎患者の妊娠について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
慢性糸球体腎炎は若年に発症する症例が多いため, 妊娠の許可について苦慮する場合が多い. 今回, 我々はこの慢性糸球体腎炎患者の妊娠の管理においての問題点, 妊娠の慢性糸球体腎炎に与える影響などを検討した. 腎生検を施行し, 組織診断の確定した腎炎患者15症例17回の妊娠, 分娩例について, 腎機能, 血清尿酸値, 血清アルブミンとその妊娠の結果, 妊娠の腎炎に与える影響を調べた. また, 純粋型妊娠中毒症の患者と比較を行い, 妊娠末期に出現した蛋白尿の鑑別についても検討した. (結果) 腎生検組織では, 微少変化群3例, 膜性腎炎1例, 増殖型腎炎10例(内, IgA腎症7例), 未施行例1例であつた. 1) 観察症例15例17回の妊娠では混合型妊娠中毒症の合併は1例のみであつた. 基準を満たした症例では妊娠は慢性腎炎の経過に大きな影響を与えなかつた. 2) 生下時体重を見ても, SFD (small for date)を認めたのは混合型妊娠中毒症の合併があつた1症例のみであつた. 従来の報告では母体の血清アルブミン値と胎児の生下時体重は相関すると言われているが, 高血圧を伴わなければ, 低アルブミン血症であつても出生時体重には影響がないと判断された. 3) 腎炎のみでは血清尿酸値の上昇はないため, 妊娠末期に蛋白尿が出現した症例において7mg/dlを超えて上昇するようであれば, 腎炎の増悪ではなく, 妊娠中毒症の病態を考える必要があつた. 4) 血清尿酸値と, 生下時体重の間に負相関(r=-0.67)を認めたことは, 尿酸の上昇が胎盤機能不全によることを支持する所見と考えられた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1988-03-01
著者
-
八神 喜昭
名古屋市立大学医学部産婦人科
-
八神 喜昭
名古屋市立大学 産婦人科
-
両角 國男
名古屋第二赤十字病院腎臓内科
-
両角 国男
名古屋市立大学 第3内科
-
両角 國男
名古屋市立大学医学部第三内科
-
吉田 篤博
名古屋市立大学人工透析部
-
吉田 篤博
名古屋市立大学医学部人工透析部
-
吉田 篤博
名古屋市立大学 医学部 人工透析部
-
両角 國男
名古屋市立大学 第3内科
-
両角 國男
名古屋第二赤十字病院腎臓病総合医療センター腎臓内科
関連論文
- 性感染症としての子宮頸管炎におけるAzithromycinの臨床的検討
- 313 抗リン脂質抗体陽性反復流産患者における抗ガングリオシド(GM_3)抗体の解析とその意義
- 産婦人科領域におけるpazufloxacinの臨床的検討
- 産婦人科領域におけるtazobactam/piperacillinの基礎的・臨床的検討
- 462 体外受精における低受精率症例の精子の活性酸素産生とそれに対する血小板活性化因子の影響
- 160 着床期子宮内膜のprostaglandins(PGs)産生に及ぼす受精卵由来の血小板活性化因子(PAF)の影響
- 138 子宮内膜のプロスタグランディン(PGs)産生に及ぼす性ステロイドホルモンと血小板活性化因子(PAF)の影響
- 254. 前期破水及び切迫流早産妊婦における腔内検出菌についての検討
- 123. LH-RH analogue併用HMG療法の多嚢胞性卵巣症候群に対する排卵誘発効果と内分泌動態
- 131. 妊娠末期子宮頸部組織中のステロイドホルモンとその意義
- 101. 妊娠末期における血中及び羊水中AFPの意義について
- Balofloxacinの***組織内移行と産婦人科領域感染症に対する臨床効果
- 反復流死産患者におけるループスアンチコアグラントと抗 β2glycoprotein I 抗体
- P-212 羊水細胞DNAを用いた出生前双胎卵性診断
- P-208 原因不明反復流産患者における妊娠予後因子の検討 : NK細胞サブセットの解析
- P-207 反復流死産患者における抗β2glycoproteinI抗体とlupus anticoagulantの意義について
- P-115 妊娠中毒症とインヒビン
- 388 妊娠中毒症発症と予防における副甲状腺ホルモンの役割についての基礎的研究
- 376 アンギオテンシノーゲンの遺伝子多型を利用した妊娠中毒症発症の予知
- 362 ヒト精子におけるカルシウム依存性システインプロテアーゼ(カルパイン)の解析
- 137 健常妊婦の妊娠帰結の予知におけるβ2-glycoprotein I依存性抗カルジオライピン抗体測定の意義
- 49 卵巣癌におけるBRCA1遺伝子の異常
- 自然流産を経験した女性の心理過程の分析 : 心理的環境因子としての家族の役割の重要性について
- 3. 周産期 : b. 抗リン脂質抗体症候群と妊娠
- 反復死産により判明したプロテインC欠損症の1例
- 平成6年度 診療・研究に関する倫理委員会報告 : 平成5年分の体外受精・胚移植等の臨床実施成績
- 反復流死産の既往を持つプロテインC欠損症合併妊娠
- P-195 母体血清 2項目(α-fetoprotein, intact hCG値)テストによる胎児染色体異常のマススクリーニング : 高齢妊婦を対象として
- 名古屋市立大学病院における病院情報システムの一考察
- 108. 咽頭奇形腫「上顎体」の1例
- 流産における免疫学的機構の関与について (母体・胎児間の免疫現象に関する研究)
- 74 妊娠時における脂質代謝について : 経静脈脂肪負荷による検討
- 90. 妊娠中毒症妊婦の高Triglyceride血症におけるApoproteinの動態 : IDLを中心として
- 特発性血小板減少性紫斑病を合併した妊婦の取扱い(大量免疫グロブリン療法)
- 95. 妊娠血中Arginine Vasopressin(AVP)測定法の確立及び周産期におけるAVPの動熊 : 第21群 内分泌・末梢III
- 平成4年度専門委員会報告 : 生殖・内分泌委員会
- チャイニーズハムスター卵子へのX線照射の着床及び着床後発育に及ぼす影響
- t(14q21q)転座染色体を保有する1家系
- チャイニーズハムスター卵子へのX線照射の受精及び初期分割に及ぼす影響
- 平衡型転座保有者に対する出生前診断 : 転座染色体の分離比について
- 羊水診断よりみたtrisomy型Down症の同胞発生について
- トリソミー及び他の染色体異常既往出産妊婦に対する羊水診断
- 生殖・内分泌委員会 (平成3年度専門委員会報告)
- 第二世代の測定法による妊婦のC型肝炎ウイルス抗体陽性率と妊娠, 出産のC型肝炎ウイルス感染に対する影響について
- 451 反復流産患者の末梢血中M-CSF値に関する検討
- 447 β2glycoprotein1の凝固第X因子活性化抑制効果に対するB2 glycoprotein 1 dependent anticardoipin ant1bodyの影響について
- P-155 妊娠子宮腔フラッシング法により採取された胎児由来有核細胞による出生前診断
- P-68 習慣流産に対する免疫療法の対象選択に関する検討
- Acardius acephalusの一例
- 妊娠中毒症における Remnant Like Particles (RLP) の検討
- 390 妊娠時循環動態評価方法としてのIMPEDANCE PLETHYSMOGRAPHY
- 240 Flourescence in situ hybridization (FISH)法の出生前診断への応用 : 微細な染色体構造異常の検出
- P-151 Dynamic Mutationに起因する遺伝性疾患の出生前診断 : 脆弱X症候群と筋緊張性ジストロフィーについて
- P-150 先天性骨形成不全症の遺伝子解析とその受精卵診断の可能性への検討
- 265 胎児染色体異常のマススクリーニングとしての母体血中α-fetoprotein、intact hCG、unconjugated Estriol値測定の意義
- 264 母体血中胎児細胞による出生前診断 : 免疫磁気ビーズによる胎児血濃縮法の検討
- P-323 胎児皮膚生検による遺伝性皮膚疾患の出生前診断
- P-10 風疹胎児感染診断法の確立 : PCR法によるウイルスゲノム検出施行症例の追跡検討
- 178 PCR法を用いた風疹ウイルスゲノムの検出 : 胎児感染診断への応用
- 329 妊婦における抗カルジオリピン抗体のβ_2-glycoprotein I(β_2-GPI)依存性について
- 116. t(X:8)を保有する母体における胎児染色体の出生前診断
- 279.新しく開発した硬度計による子宮膣部の妊娠性変化の検討 : 第52群 診断・検査 産科 その2
- 200. ヒト子宮頚部の酸性ムコ多糖類に及ぼす各種ホルモン効果
- 平成5年度 診療・研究に関する倫理委員会報告 : 平成4年分の体外受精・胚移植等の臨床実施成績
- Early Detection of a Fetus with Sex-Linked Congenital Hydrocephalus
- 4.ヒト卵巣癌培養細胞の細胞遺伝学解析と制癌剤に対する感受性テスト : 第1群 卵巣 腫瘍 基礎
- 羊水診断の意義と穿刺後出生児の追跡調査
- P-272 SLE合併妊婦の妊娠動態における抗リン脂質抗体の意義
- P-162 習慣流産患者に対する夫単核球による免疫療法の検討 : その抗原量と感作時期について
- 平成3年度 生殖医学の登録に関する委員会報告 (第3報) : 平成2年分の臨床実施成績, 平成元年分の治療による出生児の追跡調査成績
- 原因不明習慣流産患者に対する免疫療法の安全性に関する検討
- 221 原因不明習慣流産の免疫療法におけるNatural Killer細胞の意義
- 493 原因不明習慣流産の免疫療法におけるsuppressor T cellの意義
- 9. 子宮膣部の螢光抗体法によるHVHの検索
- 慢性糸球体腎炎患者の妊娠について
- 妊娠中毒症と尿細管機能
- 278. DNA解析による遺伝病の保因者及び胎児診断
- 治療対象としての新生児先天性内臓奇形について
- 日本人子宮頚癌とHLA-DR抗原系
- P-192 腫瘍マーカーにおけるGPIアンカーの存在と細胞増殖に及ぼす影響
- 11 制癌剤スクリーニングとしての姉妹染色分体交換分析の有用性の検討 : 時間依存性薬剤の感受性について
- 10 CDDP誘導体の抗腫瘍効果の検討
- 244. ヒト子宮体部癌培養細胞を用いたin vitro, in vivoでの抗癌剤の効果判定 : 特に治療係数の有用性の検討 : 第51群 子宮体癌
- 165. マウスの妊娠に対するNeuraminidaseの影響 (第11群 免疫 (150〜165))
- 171. 習慣性流早産患者夫婦の染色体学的検索 第1報 ( 第IV群 胎児(新生児)及び母子衛生)
- 習慣性流早産患者夫婦の染色体学的検索 : 第一報:染色体分析
- 235. 骨盤動脈撮影法による子宮外妊娠の診断
- コルネリア・デ・ランゲ症候群の一例
- Fetographyによる胎児奇形の診断
- 原発性無月経症の検討
- 226 原因不明習慣流産患者における抗リン脂質抗体について
- 144 抗リン脂質抗体に起因すると思われる習慣流産の治療について
- 491 原因不明 習慣流産患者における抗リン脂質抗体の解析
- 22. 奇形子宮の妊娠動態に関する一考察
- 236. 蛋白分解酵素の子宮頚管に対する作用
- P-182 アンギオテンシノーゲンの遺伝子多型解析による妊娠中毒症発症予知の可能性
- アンギオテンシノーゲンの遺伝子多型と妊娠中毒症との関連(妊娠中毒症発症の背景とその予防)
- 無脳児発生の免疫遺伝学的要因
- Balofloxacinの***組織内移行と産婦人科領域感染症に対する臨床効果
- P-135 two-color fluorescence in situ hybridization (FISH)法を用いた着床前診断