正常妊婦におけるglutathioneを中心とした血中非蛋白性SH化合物の動態に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
正常妊婦における血中非蛋白性SH化合物,とくにglutathioneの各成分(全glutathione: TG,その還元型:GSH,酸化型:GSSG,全SH化合物:TSH, GSH以外のSH化合物:RSH)を箸本らの酵素分光光学法を用いて分別定量しそれの消長を非妊時および妊娠経過にしたがつて比較検討し,つぎの成績を得た. 1) 妊娠中のHct, HgbおよびRBC値はいずれも妊娠初期より減少傾向を示し,中期で最低値となり,ついで増加する傾向を示し,40週で非妊時に近づく.しかしMCV, MCHおよびMCHC値には著しい変化はなかつた. 2) 健康非妊婦の全血および赤血球(括弧内)中の非蛋白性SH化合物各成分の値はTG=28.0±1.9mg/dl (70.7±3.7mg/dl),GSH=21.2±1.3mg/dl (53.2±2.3mg/dl),GSSG=6.9±0.7mg/dl (17.5±1.6mg/dl) TSH=23.0±1.2mg/dl (57.9±3.2mg/dl),RSH=1.8±0.8mg/dl (4.5±2.2mg/dl)となり,非蛋白性SH化合物の90%以上をGSHが占め,GSHとGSSGとの比は3:1であつた. 3) 正常妊婦の血中非蛋白性SH化合物の各成分の消長をみると,全血中でのTG, GSH, TSHはそれぞれ差異はあるが非妊時のそれに比し低値を示す.その減少の理由の一つに妊娠による水血症が与かるものと思われる. 次に赤血球中のTG値はほぼ非妊時のそれの範囲内にあるが,妊娠前期に減少し,後期にはかえつて増加するS字型の増減を認めた.それの減少にはGSSGの減少が,また増加にはGSHの増加がそれぞれ重要な因子となつている.また赤血球中TSHは妊娠中期より増加し,妊娠28〜31週で最高値を示し,ついで非妊時の値に回復し,RSH値は妊娠全期を通じてほとんど変化を認めなかつた.したがつて正常妊婦におけるTSH値の変動はGSHのそれによる変化に基づくものであり,RSH値の直接的影響によるそれではないものと思われる.
- 1978-12-01
著者
関連論文
- 73. ヒト分娩期における子宮筋Ca^-Mg^・ATP aseとmyosin light chain kinase活性の推移 : 第13群 妊娠・分娩・産褥 V
- 282 巨大な下腹部腫癌より診断された胃癌の2切除例(第21回日本消化器外科学会総会)
- 当科における卵巣悪性腫瘍術後の化学療法 : 継続入院加療と断続入院加療の比較
- 176 臍動脈血流抵抗の解析による胎児成育度の判定とその背景
- 117 卵巣腫瘍に対するゴナドトロピンの影響
- 300 臍帯血流遮断時における羊胎仔脳深部白質組織中O_2濃度およびNO濃度に関する検討
- 56 妊婦子宮筋におけるglycogen (G)代謝に関する研究 : 抗progesterone剤による変化について
- 137 子宮内膜へのprogestin, glucocorticoid結合とglycogen代謝が着床現象に果たす役割について
- 66. 心房性ナトリウム利尿ホルモンの妊娠・分娩時における動態とその意義
- 185.妊娠と分娩との子宮体,頚部におけるsex steroids, prostaglandins及びoxytocin receptorsの変動 : 第31群 内分泌-臨床VII (181〜186)
- 90.胎児のrenin-aldosterone生成・分泌に対するarginine vasopressin-prostaglandinsの関与 : 第15群 胎児・新生児 V (85〜90)
- 144.Yolk sac tumorの1手術 : 卵巣III
- P-248 間歇的臍帯血流遮断時における羊胎仔脳組織中アミノ酸濃度および免疫組織学的検討
- 229 Allopurinolによる胎児脳神経障害発症予防に関する研究
- 145.正常および中毒症妊娠における2-hydroxyおよび4-hydroxy estrogensの動態について : 第29群 内分泌の臨床 II(142〜146)
- 74.ヒト子宮筋細胞plasma membraneにおける oxytocin receptorに関する動的検討 : 第21群 内分泌・レセプターII
- 45. 正常妊婦における神経内分泌機能の変化に関する研究
- 正常妊婦におけるglutathioneを中心とした血中非蛋白性SH化合物の動態 (胎児発育と胎盤) -- (妊婦の代謝適応)
- 妊娠中毒症における尿中E_3および血中LAP,HSAP測定値の臨床的有用性に関する統計的解析
- 116. ヒト妊娠初期胎盤および基底板におけるhCGとhPLの局在に関する免疫組織化学的研究
- 11. ヒト妊娠・分娩時におけるinsulin-inslin receptor動態とその分娩発来に果す役割について : 第2群 妊娠・分娩・産褥 II (7〜13)
- 176 高身長母体は、High-Risk分娩か否か? : 高身長母体の分娩に関する検討
- 206 Allopurinolによる胎児脳神経障害発症予防に関する研究
- 5) 女性の栄養と運動 : 1 妊婦の栄養 (2. クリニカルカンファランス)
- 127 喘息合併妊娠70例の臨床的検討
- (その1) 羊水・胎盤・周産期児 81. 新生児の水出納 : 特に蛋白同化ホルモン剤投与による生活出納量, 生活活動指数等の変動について ( 羊水・胎盤・周産期児・婦人科一般群)
- 113. Receptor levelよりみたoxytocinとprostaglandinsとのヒト分娩発来機序に占める役割 : 第24群 妊娠・分娩・産褥・内分泌・代謝I
- 22 子宮内膜癌の臨床像とc-erbB2 oncoproteinの発現との関連について
- 5. 女性の栄養と運動 : 妊婦の栄養 (II. クリニカルカンファランス)
- 正常妊婦におけるglutathioneを中心とした血中非蛋白性SH化合物の動態に関する研究
- 弛緩出血 (妊産婦死亡)