特発性血小板減少性紫斑病を合併した妊産婦の管理に関する臨床的研究
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概要
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特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura, ITP)を合併した妊娠を30症例48妊娠経験したので,これらの症例を解析し,ITPと妊娠が合併した場合の管理上の諸問題,殊に妊娠継続可否の決定,妊娠中や分娩時の出血管理,分娩方法の選択などに関する今後の治療方針を得んとして本研究を行つた.その結果,次の成績を得た. 1. ITPの妊娠中の経過は,ITPが発症した時期と密接に関連していた.即ち,ITPが妊娠前発症し,非寛解のまま妊娠した場合には,一般に妊娠中のITPの経過は悪く,従つて妊娠継続は不可であり,脾剔を行い,ITPが寛解してから妊娠するよう指導する.又,ITPが妊娠前に発症していても,妊娠した時点に寛解中の場合には,妊娠継続は可能である.しかし,悪化した症例は,次回妊娠前に脾剔をする様に指導すべきだと考えられる.次にITPが妊娠中に発症した場合には,一般的に妊娠継続は可能であり,次回妊娠を望む場合は脾剔が望ましい. 以上,ITPの発症した時期が,妊娠継続可否を判定する指標になり得る事が明らかになつた. 2. 妊娠中の出血管理はステロイド及び輸血にてcontrol可能である.分娩時の出血に関しては,血小板数が著明に減少していても子宮腔からの出血に限つては正常範囲内であつた.但し,頚管部や会陰部などの裂傷及び帝切などの切創からの出血は止血し難く,又腟に血腫が形成され易かつた.従つて,分娩方法は可及的に経腟分娩を選ぶべきである. 3. 分娩後のITPの経過は,妊娠中非再発例は分娩後も再発せず,一方,妊娠中重症例は大部分が分娩後も改善されない. 4.母体に抗血小板抗体が証明された症例では,一般に重症な経過をたどり,児にも血小板減少が認められることが多い.新生児血小板減少は通常,治療しなくても1ヵ月後には正常化する.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1978-10-01
著者
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