子宮内膜症の腹腔内におけるNK活性およびTGF-βの変化と妊孕能抑制に関する研究
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概要
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子宮内膜症 (内膜症) 患者およびラット子宮内膜症実験モデル (実験モデル) においてはnatural killer (NK) 活性が抑制されることが認められており, NK活性の変化は内膜症と深い関連があると考えられているがその本態はいまだ不明である。一方, transforming growth factor-β (TGF-β) はNK活性を抑制する物質として種々の細胞から産生され, 免疫機構に関与している。そこで今回内膜症患者において腹水のNK活性およびTGF-βの変動を調べ, これら因子と不妊との関連性を検討した。NK活性は^<51>Cr release assay法により, TGF-βは酸性処理した試料を透析することにより潜在型TGF-βを含めた総量としてELISA法により測定した。実験モデルは7週齢のWistar Imamichiラットの子宮内膜片を腹膜に縫合移植して作製した。また6〜8週齢のICR系マウスの受精卵から胚盤胞までの初期胚発育における腹水およびTGF-βの影響を観察し, 以下の結果を得た。内膜症患者の腹水はNK活性を有意 (p<0.05) に抑制すると共に, TGF-β濃度が有意 (p<0.05) に高いことが認められ, さらに内膜症患者の腹水およびTGF-βはマウス初期胚の発育を有意 (p<0.05) に抑制することが観察された。また内膜症組織, 子宮内膜および子宮筋腫組織ではTGF-βの産生が認められた。一方, 実験モデルの正常部位の腹膜培養上清は対照ラットの腹膜培養上清と比べてNK活性を有意 (p<0.05) に抑制した。以上のことより内膜症患者の腹水にはNK活性を低下させ, マウス初期胚を抑制する因子が存在することが認められた。そしてこの抑制因子の一つにTGF-βが着目された。またモデル実験から内膜症の成立が病変部以外の正常腹膜にも影響し, 結果として腹腔全体の免疫系の変化をもたらすことが明らかとなった。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1996-06-01
著者
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