卵巣癌細胞におけるシスプラチン耐性のアンチエストロゲンによる克服
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概要
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アンチエストロゲン(AE)の抗腫瘍効果は, 従来エストロゲンレセプターを介した抗エストロゲン作用によると説明されてきたが, エストロゲンレセプターが陰性の場合にも抗腫瘍作用を発揮することや抗癌剤の感受性増強作用(chemosensitizing effect)など多彩な生物活性を有することも明らかとなってきた. そこで我々はAEのchemosensitizing effectによるcisplatin (CDDP)耐性の克服の可能性についてin vitroにおいて検討した. 使用した細胞は卵巣漿液性嚢胞腺癌由来のKF及びMH細胞と卵巣明細胞癌由来のKK細胞, さらにKF細胞から誘導されたCDDP耐性株のKFra, KFrb細胞である. また, 対照として乳癌細胞由来のMCF-7細胞を用いた. AE単独の50%増殖阻害率(IC_<50>)を較べると, 使用した3種のAEのうちではクロミフェン(CLO)が最も強い抗腫瘍効果を有し, タモキシフェン(TAM)及びトレミフェン(TOR)はほぼ同程度であった. CDDPに対する感受性とAEに対する感受性は相関せず, CDDP耐性の最も強かったKFra細胞はAE, 特にCLOに対し強い感受性を認めた. CDDPとAEを併用した際の細胞増殖抑制効果をみると, 1μM のCLOとの組合せでCDDPのIC_<50>を下げることが可能であり, 特にKFrb, KK, MCF-7細胞においてその効果が強かった. 同様に1μMのTAMとの併用でKF, KFra, MCF-7細胞において, 1μMのTORとの併用でKFra, KK, MCF-7細胞において有意にCDDPのIC_<50>を低下させた. CDDPとCLO を併用した際のinteractionについてisoborogramを用いて検討したところ, KFra細胞では高濃度のCLOはCDDPとsynergisticに作用するものの低濃度ではantagonisticに作用することがわかった. また, KK細胞ではadditiveな作用を, MCF-7細胞ではsynergisticな作用をどの濃度においても認めた. さらにAEのCDDPに対するchemosensitizing effectのメカニズムを知る目的で, KFrb細胞に3種のAEを24時間接触した際のprotein kinase C (PKC)活性をcytosolとmembraneに分けて検討した. 3種のAEではいずれも1μMの濃度ではcytosolのPKC活性はコントロールに較べ上昇したものの, 5μM, 50μMでは濃度依存性に低下した. また, 低下の程度はcytosolよりもmembraneにおいて強かった. 以上, 3種のAEは, エストロゲンレセプターが陰性である種々の卵巣癌培養細胞において, CDDPに対するchemosensitizing effectを有することがわかった. そのメカニズムとしてPKC活性のcytosolからmembraneへのtranslocation阻害作用が関与している可能性が示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1995-01-01
著者
-
永田 一郎
防衛医科大学校分娩部産婦人科教室
-
工藤 一弥
防衛医科大学校産科婦人科学講座
-
喜多 恒和
防衛医科大学校産科婦人科学講座
-
菊池 義公
防衛医科大学校産婦人科
-
平田 純子
防衛医大
-
平田 純子
防衛医科大学校
-
戸出 健彦
防衛医科大学校
-
久野 篤
防衛医科大学校産婦人科
-
石井 賢治
防衛医科大学校,産科婦人科
-
工藤 一弥
防衛医科大学
-
喜多 恒和
防衛医科大学校病院産婦人科
-
永田 一郎
防衛医科大学:埼玉医科大学産婦人科
-
戸出 健彦
大木記念女性のための菊池がんクリニック・ストレスケアセンター
-
今泉 英司
防衛医科大学校産婦人科学教室
-
今泉 英司
防衛医科大学校産婦人科
-
永田 一郎
防衛医科大学
-
菊池 義公
防衛医科大学校
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