ヒト卵巣線維肉腫細胞株の樹立とその抗癌剤感受性試験

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概要

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17歳の若年に発症した卵巣原発線維肉腫を経験し, 手術時に採取した腫瘍組織から継代可能な細胞株の樹立に成功した。本症例の病理診断過程及び細胞株の特徴を述べ, あわせて抗癌剤感受性を検討したので報告する。1. 組織診断 : 手術時摘出標本のHE染色で大型巨細胞を混じえる紡錘型の間質系腫瘍細胞が特徴的な索状配列を呈し, 核分裂像は10高倍率視野あたり25を数えた。PTAH, 銀, Azan-Mallory, Sudan III染色等の特殊染色標本所見及び中間系フィラメントに対する免疫組織染色の結果より, 卵巣原発線維肉腫と診断した。2. 樹立細胞株の特性 : 1) 形態学的特性: 位相差顕微鏡では多数の紡錘型細胞に多核巨細胞が混在し, 細胞は小コロニーを中心に発育し, 上皮系腫瘍細胞に特徴的な敷石状の配列は示さずに, pile-upすると, 次第に培養液中に遊離する傾向を示した。透過電顕像では細胞質が乏しく, 細胞内小器官の発育は未分化で, 線維成分は観察されなかった。2) 生物学的特性: 染色体数は45から128と広域に分布する (mode: 65)。倍加時間, 細胞密度, plating efficiencyはそれぞれ76.9時間, 5.4×10^5/cm^2, 30.2%であった。腫瘍マーカーは少量のCEA及びsialyl SSEA-1のみ産生能が観察された。nude mouse皮下に継代可能であり, 原腫瘍と類似した組織像を呈するが, 腹水産生能はない。3. 抗癌剤感受性試験とGP170の発現の検討 : in vitro感受性試験を12種類の抗癌剤につきMTT assayにより検討した。IC_<50>/PPCが1以下を示したのはAdriamycinのみであった。期待されたCDDP (IC_<50>/PPC: 4.8) に対する感受性は低く, 間質系腫瘍で頻用されるDTICについては感受性は全く観察されなかった。原腫瘍・株細胞ともGP170 (mdr-1 products) を発現していることが免疫組織学的に確認された。
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1992-04-01

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