妊娠糖尿病の診断基準に関する一考察 : 妊婦耐糖能異常軽症例の検討から
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概要
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日本産科婦人科学会栄養代謝問題委員会指針 (案) による妊娠糖尿病判定基準を満たさない軽症の妊婦耐糖能異常例の解析から, 同判定基準の妥当性を検討することを目的とし, そのために, 便宜上, 日本糖尿病学会の境界型基準値を用いて検討した。単胎妊娠571例を対象に妊娠20週以降にglucose challenge testを妊娠糖尿病のscreening法として施行した結果, 日本産科婦人科学会判定基準を満たす妊娠糖尿病群 (GDM群) は10例 (1.8%) であり, 一方, 同基準を満たさないが日本糖尿病学会境界型基準の2点以上の異常値を示すA2群は18例 (3.2%) であった。このA2群の母体平均年齢 (33.0歳) 及び30歳以上の高年妊婦の頻度 (72.2%) は, いずれもGDM群 (31.8歳, 70.0%) と差がなく, 正常対照群 (N群, 29.1歳, 42.2%) より有意に高値を示した (p<0.01, p<0.05)。母体のinsulin分泌能を75gGTT時のΔIRI/ΔBSで検討したところ, A2群 (median: 0.58) は, GDM群 (0.42) と同様に, 日本糖尿病学会境界型基準の正常型を示すN群 (1.00) や1点のみの異常群 (A1群, 0.88) に比し有意に低下していた (p<0.01)。A2群 (n=10) の血糖値の日内変動はinsulin療法を必要としなかったGDM 群 (n=9) の食事療法施行前の日内変動と1日平均血糖値, 平均空腹時血糖値及び平均食後血糖値のいずれもまったく差を認めず, 特に食後血糖値はN群 (n=5) 及びA1群 (n=3) より高値を示した (p<0.05)。一方, large for gestational age児の頻度はA2群で22.2%とN群 (7.2%) より有意に高頻度であった (p<0.05)。また, A2群の1例は分娩後の再検査で糖尿病と診断された。以上の結果はA2群は日本産科婦人科学会の妊娠糖尿病判定基準を満たすGDM群と集団的にはきわめて類似しており, A2群には, 本来, 妊娠糖尿病とされるべき症例が含まれていることが類推され, 同判定基準の再検討の必要性が示唆された。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1991-11-01
著者
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